初めての相続 誰に相談すればいい?

こんにちはFPバンク編集部です。
「相続」は、いつかは誰もが経験する事ですが、そう多く経験する事ではありません。身近な人の寿命や大きな病気が近づき、初めて「どうしよう」と悩む方が殆どではないでしょうか?

そこで今回は「相続の悩み事は、どこに相談すれば良いか」について、解説します。このコラムを読めば、あなたが次に取るべき行動が見えてきます。相談先を正しく選んで、「相続」を迎える不安を解消しましょう。

1.相続の相談先は、あなたの悩みに応じて選ぼう

相続に関わる相談先と言うと、先ず税理士や弁護士などを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。でも普段から付き合いがある人を除けばなかなか敷居が高い人達ですね。

またそれぞれ得意分野が異なるので、選び方を間違えてしまうと、せっかく勇気を持って相談に行ったのに、二度手間やムダなコストがかかって、疲れてしまいます。

そこで、相続の相談先選びは、先ず「あなたの相続の悩みがどこに(どの辺に)あるか?」を整理してから、それに合った相談先を選ぶことをお勧めします。

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2.あなたの悩みは何ですか?

(1)「あなたの相続」を書き出してみましょう

先ず、相続の対象になりそうな財産と、相続に関わりそうな人物を書き出してみましょう。

  • どんな財産があるのか  …不動産、銀行預金、証券口座、など
  • どんな登場人物がいるか …配偶者、子ども、両親、兄弟、など

これは頭の中だけで考えるのではなく、実際に書き出してみることが大切です。ざっくりした手書きのメモで構いません。書き出して目で見えるようにすると、相続の全体像が見えてきます。

法律や税金の正確な知識は不要です。あなたの悩みを解決することが目的なので、あなたが気になる範囲で書き出してください。あとで専門家に相談する時も、必ず最初に行うのは全体像の把握なので、ここでやっておけば役に立ちます。専門家がヒアリングを行ってくれるので、どこか修正が必要な点があれば、あとで修正してもらえます。

(2)「あなたの悩み」を書き出してみましょう

相続の全体像が書き出せたら、どのあたりが気になるかを考えてみましょう。

  • 財産の分け方でしょうか? もめない分け方? あなたが望む分け方?
  • 相続税の心配でしょうか? いくらぐらいかかるか? どのような手続きが必要か?
  • それとも、そもそもどんな問題があるか、まったく検討がつかない状況でしょうか?

ここでも法律や税金の正確な知識は不要です。あなたが気になる点を、箇条書きで書き出してみましょう。これも、あとで専門家に相談する時に役に立ちます。

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(3)相談先選びを始めましょう

相続の全体像と、あなたの悩みがどの辺にあるかを書き出せたら、いよいよ相談先選びを始めましょう。
次の章では相談内容ごとに相談すべき先を紹介しているので、自分の悩みにあった相談先がどの辺かを探してみてください。

3.この悩みなら、この相談先

(1)相続税の申告が必要なら …税理士

相続税の申告を任せたいなら、法律のルールで、税理士に依頼しなければなりません。

しかし相続税には基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)という制度があり、相続財産がこれ以下の場合には相続税がかからないので、例えば相続財産が4,000万円で法定相続人が2人の場合であれば、相続財産4,000万円が基礎控除4,200万円を下回るため、相続税はかかりません。

国税庁の調査*によると、相続全体のうち相続税がかかるのは1割未満にとどまるようです。

〈参照サイト〉*国税庁ホームページ「平成28年分の相続税の申告状況について」

もし相続税の申告が必要となる場合は、税理士に任せた方が良いでしょう。
相続税のルールはかなり複雑なので、相続財産の金額の評価や課税ルールを正しく上手にどう適用して申告するかにより、そもそも税金がかかるかどうか、また納税額が数百万円や数千万円変わってしまう事もあり得ます。

ただし税理士にもそれぞれ得意分野があり、殆ど取り扱っていない税理士だとルールの適用を間違えてしまう場合があるので、相続税申告の経験が多いかを聞いてから、依頼しましょう。

税理士に支払う報酬は、相続財産の額の0.5~1.0%くらいかかるので、例えば相続財産が1~2億円の場合であれば100万円くらいは想定しておく必要があります。

なお相続税の基本的なルールを知りたい方には、国税庁のパンフレット*がお勧めです。
中でも「小規模宅地等の特例」や「配偶者の税額軽減」の適用を受けるためには申告が必要という点は見落とし易いので、注意が必要です。

〈参照サイト〉*国税庁ホームページ「相続税のあらまし」

(2)相続財産の分け方で争いがあるなら …弁護士

相続財産の分け方について争いがあって、自分に代わって裁判や交渉をしてもらいたい事がある場合は、法律のルールで、弁護士に依頼しなければなりません。遺産分割調停や審判など裁判所の手続き、遺留分侵害額請求※などがある場合に頼れるのは弁護士です。

※遺留分侵害額請求とは、亡くなられた方の遺言で法定相続分と異なる相続内容が指定された場合に、遺留分という法定相続分の一定割合(妻や子の場合は1/2)に相当する額を、法定相続人が遺言で利益を得た者に対して請求できるという制度

逆に言えば、そこまでの争いが無い場合には、弁護士に相談する必要はなく、相続に詳しければあとで説明する司法書士、行政書士やFPなど、他の専門家に相談しても構いません。

また弁護士の場合も、それぞれ得意分野が異なるので、相続の相談をするのであれば、相続案件の経験が多いか聞いてから依頼した方が良いでしょう。

弁護士に支払う報酬は、内容や相続財産の額により、弁護士ごとに異なりますが、例えば遺言書作成だけであれば10~20万円、遺言執行まで行う場合は100万円、遺産分割請求であれば200万円くらいの想定*が必要です。

〈参照サイト〉*日本弁護士連合会ホームページ「市民のための弁護士報酬ガイド」

(3)不動産登記や法律的な手続の相談なら …司法書士

司法書士は、弁護士のように自分に代わって交渉してもらう事はできませんが、登記や裁判所などの書類を作成する法律の専門家なので、相続に必要な書類の収集や作成ができます。

相続財産には不動産が含まれるケースが多く、その場合は不動産相続の登記の際にはほぼ必ず司法書士が登場しますし、特に相続手続きの経験が多い司法書士であれば、法律の専門家としては有力な相談先になるでしょう。

司法書士への報酬は、不動産登記1件で10万円くらい、遺言書作成サポートは一般に弁護士よりは安めで10万円くらい*かかります。

〈参照サイト〉*日本司法書士連合会ホームページ「報酬に関するアンケート」(2018年1月実施)

法律の専門家としてはこの他に、行政機関に提出する書類の作成を専門とする行政書士という選択肢もあります。
相続サポートの経験が多い行政書士であれば、法律的な相談をする候補になりますが、司法書士のように不動産登記や家庭裁判所に提出する書類の作成はできません。

(4)コストをかけても「全てお任せ」したいなら …信託銀行

信託銀行は、財産コンサルティングのメニューとして、遺言信託や遺産整理といった相続に関するサービスメニューを用意しています。全てお任せしてしまえば、遺言、遺産分割、相続税、相続財産の運用など、相続全般のお手伝いをしてもらえるので、楽ができます。

その代わり、相続財産の額にもよりますが、遺言を作成・執行する遺言信託で100万円、相続後の遺産整理で100~200万円くらいの費用がかかります。これに加えてこれまで説明したような相続税の申告や相続登記の費用は別途かかるので、合計するとかなりの額になります。

信託銀行は、「相続の手続きをまとめて引き受けてくれるなら、数百万円かけても高いと思わない」という人向けの選択肢だと思います。

(5)自分のライフプランに合った相続をしたいなら …FP

FP(ファイナンシャル・プランナー)は個人のお金全般に関する専門家で、相続も専門分野のひとつとしており、ライフプラン(人生全体のお金の計画)の相談を得意としています。

従って、例えば相続で複数の選択肢があるような場合に、あなたのライフプランから見てベストの選択のアドバイスが期待できます。

その代わりFP自身では税理士や弁護士、司法書士などの固有業務はできないので、それらが必要な場合はFPの持つネットワークでコーディネートしてもらうことになります。

またFPと言っても、保険や金融商品を売ることがメインのFPだと十分なアドバイスが受けられない場合があるので、ライフプラン相談が本業のFPを選ぶことをお勧めします。

FPの基本的な相談料は1時間あたり5,000円~10,000円くらい*ですが、その他サービス内容に応じて、またコーディネートされた専門家への報酬等が別途必要になります。

〈参照サイト〉*日本FP協会「相談料について」

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株式会社ハート・コード

4.まとめ

以上、相続の相談先の選び方についてお話してきましたが、参考になりましたでしょうか。

だいたいの相談先が分かったら、次は具体的にどこに相談したら良いかですが、今は大抵の専門家が自社サイトを持ち、また初回は無料相談や低額の料金で相談を受けている事が多いので、いくつか検索して良さそうと感じたところが見つかったら、試しに相談を申し込んでみましょう。

そして相談に行くときは、2.で作成したメモを持っていくことを忘れずに。

あなたにピッタリの相談先が見つかり、安心して相続できるようになる事を、心よりお祈りしております。

 

2020年6月15日
text by 久保田 正広
FPバンク

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