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2019.12.13
相続・贈与

意外と知らない⁈生命保険で本当の相続対策

「生命保険で相続対策をしよう」
相続問題に興味がある人であれば、一度は聞いたことがあるかも知れません。
しかしながら、相続対策に生命保険を正しく活用する方法を知っている人は意外と少ないのです。
正しい活用法を知らなければ高い効果を望むことはできません。そればかりか、良かれと思って入った生命保険が、思わぬ相続トラブルの元になることもあります。生命保険に加入する前には、相続対策のために「なんの目的」で「どういった保険」に入るのかをしっかりと考えることが重要です。
逆に目的や活用法が正しければ、高齢や持病があっても活用できる生命保険はありますのであきらめずにトライしましょう。

1.相続対策の基本

(1)相続は考える優先順位がとても大事

「相続対策」と聞くと、真っ先に相続税の節税対策が思い浮かびます。特に平成27年1月に相続税の増税が行われ、メディアなどでも盛んに「相続税の課税対象になる家庭が1.5倍などと取り上げられたため、ご心配されている方も多いかもしれません。
しかし、相続対策において一番大事なのは相続税の節税ではありません。

相続対策に必要なこと3つ、

  • 「遺産分割対策」
  • 「相続税の納税資金対策」
  • 「相続税の節税対策」

です。

(2)なぜこの順番なのか

相続対策において、最も重要なのは
「遺産分割対策」です。
相続問題で残された遺族が揉めるという例は枚挙に暇ありません。
その状態を想像してみてください。いくら相続税を節税でき、無事に相続税を納税できたとしても、遺産を巡って親兄弟がいがみ合っていたとしたら、その相続になんの意味があるでしょうか。たとえ納める相続税が少しぐらい多くなったとしても、後で揉め事が起こらないようにきちんと遺産分割対策をしておく。残された遺族のことを考えるのであれば、どう分けるのかという「遺産分割」がまず始めに考えるべきなんです。

次に考えたいのが、
「納税資金対策」です。
相続税は「現金で一括納付」が基本です。土地や自社株等の課税対象となる遺産はあるのに納税のための現金がなくて苦労するというのも、これまた相続時に発生するよくある問題です。

この二つの問題をクリアできて始めて
「節税対策」を考えます。
真っ先に節税から考えてしまった結果、親兄弟が揉める遺産分割になってしまう、納税する現金が用意できないでは本末転倒です。揉めない遺産分割のため、納税資金準備のために、結果として払う相続税が最小にならなかったとしても、それは残された遺族のために有意義なお金の使い方だと思います。

2.「遺産分割対策」に有効な生命保険の入り方

さて、考えるべき順番と目的が分かったところで、それぞれについてどんな生命保険が有効かを考えましょう。「なんの目的」で「どういった保険」に入るのかが大切です。

(1)遺産分割で生じる問題とは

遺産が全て現金であれば遺産分割はあまり問題にななりません。相続人がそれぞれの相続分の現金を受け取れば良いだけです。しかし日本ではそんなケースは極めてまれで、遺産の大部分が自宅などの不動産が占めるというケースが圧倒的多数です。中小企業のオーナーであれば、遺産の大部分が自社株ということもあります。
こうした不動産や自社株は、遺産分割しづらいものの代表格。一つの自宅を子供二人の共有名義でのこす、自社株を子供二人に均等に分けたりすれば、一見問題がないように見えますが、本当に仲良くシェアすることができるでしょうか?
その子供の代になったら、孫の代になったら・・・問題を先送りにするとどんどんもん代が複雑化していきます。
うちは対した相続財産がないから分割では揉めないよという方。
実は「遺産が少ないほど揉める」というのが相続の世界の常識です。

最高裁判所の平成27年度「司法統計年報」によると、

相続分割事件全体の中で
5,000万円以下の遺産分割で揉めている件数
全体の75.9%

その中で、1000万円以下の遺産分割で揉めている件数
全体の32.1%

どうでしょう、あなたにも関係あるかもしれません。

(2)代償分割を活用する

さて、実際に遺産が分割しにくいものだった場合はどうするのか。最も良く使われるのが「代償分割」という方法です。
これは、比率として大きい財産の相続を受けた人が、他の相続人に対し別の資産で代償するという方法です。

具体例を挙げると、息子が二人いるAさんの相続財産が自宅だけだったとします。この自宅の評価額が3000万円だった場合、二人の息子の相続分はそれぞれ1500万円となります。
なにも考えなければ、自宅を息子二人の共有名義にするかもしれません。
でも共有名義のままほおっておくと売りたいときに売れない、孫やその子供の代になってしまったら共有名義者がどんどん増えてしまい収集がつかなくなってしまうなど やってはいけない遺産分割方法です。

このケースで登場するのが「代償分割」です。
この場合の「代償分割」は、
例えば実家の名義を長男単独のものとし、
その代わり1500万円を長男から次男に支払うという形で行われます。
※一括で支払わなくても大丈夫です。

(3)代償分割における生命保険の活用法

ただ、長男としてもいきなり「家を手に入れたのだから1500万円を弟に払え」と言われても難しいものがあります。長男の経済状況によっては不可能なこともあるでしょう。そんな時に生命保険を活用する方法があります。

この例で考えれば、
長男の代償分割資金となる1500万円を保険金とした終身保険を、
被保険者…Aさん、受取人…長男
としてかけておけばよいのです。
相続が発生したら家は長男単独の名義とします。
そうすると長男は次男に1500万円を支払う必要がでてきますが、そのための資金として長男が受取ったAさんの死亡保険金1500万円を活用します。その結果、長男は家を手に入れ、次男は現金1500万円を手にすることによって、息子双方にとって満足のいく結果となるはずです。

(4)受取人に要注意!

ここで注意したいのが、保険金の「受取人」です。このケースでは受取人を必ず長男にしなくてはなりません。よくやってしまう間違いが、受取人を次男としてしまうパターン。Aさんとしては「家は長男、現金は次男」という認識がありますので、始めから受取人を次男としたほうが息子たちの手間が省けるという気持ちがあるかも知れません。しかし、実はコレ、大きなトラブルの元です。
というのも、Aさんの相続によって次男が受け取った保険金は、民法上相続財産とはなりません。例えその原因がAさんの相続だとしても、あくまで受取人である次男の固有財産となります。裏を返せば、保険金の受取人が次男の場合、民法上次男はAさんの相続財産を一銭も受け取っていないということになります。次男にそうした認識があった場合更に相続財産をよこせという可能性は否定できません。そして万が一訴訟沙汰になった時は、次男の主張が認められる可能性が高いのです。
やはりここは長男を受取人としなくてはなりません。それによって相続財産総額は3000万円。その内1500万円を長男が次男に代償分割という図式が成立ちます。

3.「納税資金」に有効な生命保険の入り方

(1)現金の準備をしていないと…

「遺産分割対策」の次に来るのが「納税資金対策」です。相続税は「現金で一括納付」が基本。せっかく無事に遺産分割が済んでも納付すべき現金がないと、遺産分割のやり直しなどという事態も考えられます。
分割のところでも触れましたが、現実の相続は現金以外の財産がほとんどです。不動産が相続財産の大部分を占める場合、納税資金のためにそれを現金化するにはそれなりの手間とコストがかかります。
相続税の納税期限は相続発生の翌日から10カ月後、不動産を売却する期間としては余裕があるわけではありません。相続納税資金捻出のために売り急いで相場より安い金額で買いたたかれた…などという話も不動産の世界ではよく耳にする話です。前もって現金の準備をしておかないと、遺すべき相続財産そのものが目減りしてしまうという例と言えます。
一方、「現金がなければ物納で」と考える方もいます。場合によっては有効な手段ですが、物納には様々な要件があります。簡単には使えない制度だと思っておいた方がよいのです。

(2)納税資金向けの生命保険とは

そうして考えると、やはり予め納税資金は確保しておきたいところです。ここでも終身保険が役立ちます。被相続人を被保険者にしておけば、まさに相続発生時に納税資金が準備できます。
ここでは一歩踏み込んで、終身保険の費用対効果を考えてみましょう。変な話ですが、いつかは必ず保険金がもらえるのが終身保険。それであればそのための原資、つまり保険料は低ければ低いほうが良いに決まっています。
納税資金として考えるならどんな終身保険選べばよいのか、是非目的を明確にして相談してみてください。
なお、ここでも誰を受取人にするかは注意が必要です。前述の通り、受け取った保険金は受取人の固有財産となりますので、受取人が「死亡保険金=納税資金」をいう認識を持っていないとこれまたトラブルの元です。代償分割と絡めて慎重に受取人を決め、なおかつ受取人にその意図をしっかり理解しておいてもらうことが重要です。

4.「節税」に有効な生命保険の入り方

(1)なぜ生命保険が節税対策になるのか

その答えは「日本で唯一相続税が非課税になる金融商品」だからです。
生命保険金は、相続税評価額に加算される前に一定の控除額が認められています。その控除額は「法定相続人×500万円」の計算で求められます。
この生命保険の法定相続人一人当たり500万円の控除枠を活用しない手はありません。ちなみに、この死亡保険金は「民法上」は相続財産と見なされませんが、「相続税法上」はみなし相続財産として課税対象となります。ご注意ください。

(2)暦年贈与も活用しよう

生命保険を使った節税対策のもう一つの考え方が、生前贈与を上手く使う方法です。贈与税は毎年110万円の贈与までは非課税です。この非課税枠内で少しずつ生前贈与を行うことを「暦年贈与」と呼びますが、その制度を使って親(=被相続人)のお金で子供(=相続人)が終身保険に入るというのも相続税節税に有効な手段です。

ポイントは、
「保険契約者…子供 被保険者…親 受取人…子供」
とすることです。

たとえばAさんから長男に毎年非課税枠でまとまったお金を渡します。長男はAさんを被保険者として終身保険に入ります。保険金の受取人は長男本人です。毎月の保険料はAさんからの贈与で賄いますので長男の実質負担はありません。
この状態でAさんが亡くなった場合、当然保険金が長男に支払われるわけですが、この保険金は民法上のみならず相続税法上も相続財産に該当しません。考えてみてください。保険契約上は長男が保険料を払い長男が保険金を受取っているわけです。
保険金が支払われる理由はAさんの死亡かもしれませんが、自分で出したお金を自分で受け取るわけですから、これは相続とは切り離されたものとなります。この場合の保険金は所得税法上の一時所得となり、長男の他の所得と一緒に課税されます。一時所得には税法上の優遇もあり、所得税を払ったとしても相続税より低く抑えられる可能性は大いにあります。
ただし、「連年贈与」にならないようには注意が必要です。毎年決まった時期に決まった金額の贈与を続けていると「連年贈与」として贈与税の対象になる可能性があります。例えば、毎年100万円を10年続けて贈与した場合、それぞれ別の贈与ではなく元々1000万円の贈与を分割して渡しただけと見なされる場合があるということです。
これには贈与するタイミングや金額をずらしたり、わざと110万円を少しだけ超える贈与を行い、小額の贈与税を納めたりするような工夫が必要です。

5.今からでも遅くない生命保険の活用

効果はわかったけど、そもそも生命保険に入れないんじゃないかという質問をよくいただきます。

(1)告知内容に不安がある場合

健康でないと入りづらいのが生命保険。とは言え、特にご自身の相続を考えるようなご年齢になると、まったく体に不安がないという方のほうが稀かもしれません。
そんな方には、「限定告知型」と呼ばれる保険があります。中には「職業だけを告知する」だけで入れる保険もあり、健康面でご不安のある方もこれでしたら問題なく加入できます。こうした生命保険は保障という部分では比較的手薄なケースも多いのですが、相続対策ということで目的を絞ってしまえば十分に活用できます。

(2)保険料の支払に不安がある場合

生命保険では、長い期間に渡って保険料を払い続ける形が一般的です。例えば退職されて年金暮らしをしている方は「これからずっと保険料を支払っていけるのだろうか」という不安に思われる方もいらっしゃることでしょう。
確かにいくら相続対策のためとは言え、保険料を支払うために生活が苦しくなるようでは本末転倒です。年金暮らしの方の中にはそれまで長い時間をかけて貯めてきた貯金がある方もいらっしゃいます。老後の暮らしを圧迫しない範囲でその貯金の中から「一時払」という形で保険料を先に納めてしまえば、日々の生活費の中から保険料を捻出することに頭を悩まされることもなくなります。ただし、あくまでご自身のお金です。ご自身にお金が必要な時には解約できる、貸付を使うことができるそんなことも視野に入れて考えましょう。

2019年12月13日
text by 久保田 正広
FPバンク

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