こんにちはFPバンク編集部です。
いざ家を買おうと思った時に、
「住宅購入するにしても、一体なにから手を付けたら良いのか?」
「様々な選択肢の中でどうやって選べば良いのだろう?」
「この物件価格で本当に家計は大丈夫なのか?」
このような悩みを持つ方は多いのではないでしょうか。
人生で最大の買い物、一生に一度となればより慎重になるのも当然です。
それなのに不動産屋さんからは「絶対買った方がいい」とか「今すぐ買わないと売れてしまいます」なんて言われて、どうしようなんて焦っている方も少なくないと思います。
そんな方のために、家を買おうと思った時に起る様々な疑問や不安に対して、買う側の立場に立って、本当に必要な情報だけを厳選してお届けします。
この記事を読むだけで、住宅購入の基礎知識から失敗せずに住宅購入ができるポイントまで一気にわかるようになるので、スッキリ、安心してマイホームを購入することができるようになるでしょう。
目次
1.マイホームの選択肢は様々
(1)賃貸 or 持ち家(購入)
家を買おうと思った時に最初に訪れる疑問の多くが、賃貸 or 購入どちらがいいの?です。そこでまずは、それぞれのメリット・デメリットを見てみましょう。
賃貸のメリット:転職や結婚など大きなライフイベントの際に気軽に住み替えができる。
賃貸のデメリット:老後の住居費用を賄うために相当の貯蓄が必要。
購入のメリット:ローンの返済が終われば資産が残る。老後の家賃がなく、リフォームなど自由にできる。
購入のデメリット:一戸建てならメンテナンス費用が、マンションなら修繕積立金がかかる。
それぞれ特徴があるので、一概にどちらが良いとは言い切れません。そこで、費用としてはどちらがお得なのか、これは計算できますので、このあと詳しく見ていきましょう。
(2)賃貸と持家のコスト比較
賃貸と持家の住居費を比較してみましょう。
今回は30~85歳までの55年間の住居費総額を、首都圏の賃貸マンションと分譲マンションの平均値で比較しました。
賃貸住宅(2DK)の場合
家賃総額:109,143円×12ヶ月×55年=7,203万円
その他の費用=321万円
合計7,647万円
その他の費用内訳:
入居時費用:敷金:1ヶ月・礼金:0.9ヶ月・仲介手数料0.5ヶ月
更新料:1ヶ月(契約更新時/2年毎)
家賃相場
出典:公益財団法人 不動産流通推進センター
https://www.retpc.jp/wp-content/uploads/toukei/201909/201909_4chintai.pdf
敷金等の相場
出典:公益財団法人 日本賃貸住宅管理協会 日管協総合研究所
https://www.jpm.jp/marketdata/pdf/tankan23.pdf
分譲マンション(2LDK・65㎡)の場合
価格:3,693万円
住宅ローン3,693万円
金利1.6%固定、35年、元利均等
返済額:109,490円/月
返済総額:109,490円×12ヶ月×35年=4,599万円
その他の費用=2,142万円
合計6,741万円
その他の費用内訳:
購入時諸費用:74万円
管理費:12,211円/月
修繕積立金:10,683円/月
固定資産税:10万円/年
首都圏中古マンション価格
首都圏中古マンションの管理費・修繕積立金
出典:公益財団法人東日本不動産流通機構
http://www.reins.or.jp/pdf/trend/mw/mw_202009_summary.pdf
http://www.reins.or.jp/pdf/trend/rt/rt_202005_1.pdf
賃貸の総額は7,647万円、購入の総額が6,741万円ということで、購入に軍配が上がりました。
ただし、経済合理性から言えばどちらも同じになると言えます。
とは言え、昨今の低金利や住宅ローン控除等の支援策などにより、購入に軍配が上がるケースが多くなっています。
変動金利であればさらに利息が少ないですが金利上昇リスクがあるので、ここでは全期間固定金利でコストを確定させています。
また購入の場合は将来資産価値として残りますが、ここではその計算は割愛します。
(3)一戸建て or マンション
購入の方がいいと思っても、どんな家にするかは選択肢がたくさんあるので迷ってしまいますね。
首都圏ではこれまでマンションが当たり前という感覚があったかも知れませんが、新型コロナの影響で一戸建ても選択肢に入ってくると思います。
リモートワークが可能な広さや郊外でも通勤の問題なしという新しいスタイルが常態化していきそうですね。働き方だけでなく、家族の数や車の所有等も判断のポイントになります。
先ほどの賃貸 or 持家の比較と同じように、一戸建てとマンションのコスト比較についても、経済合理性から言えばほぼ同じになると考えられます。
しかし、差が出るポイントを把握した方が良いでしょう。例えば駐車場代は一戸建てに有利です。一方、流通性はマンションの方が高いので、住み替えに伴う価値の下落は避けやすいです。
このように、単純比較というよりはむしろ、ライフスタイルによって損得に影響してくるのが比較のポイントと言えます。
(4)新築マンション or 中古マンション
首都圏でも一戸建ての選択肢が増えてきたとは言え、まだまだシェアが高いマンションのにおける新築・中古について比較してみましょう。
まずは概況ですが、首都圏では新築、中古ともマンションの高騰が続いています。新築は2019年の平均で6,234万円と首都圏の価格水準は、すでに平均的な年収層には手が届かない水準です。
新築マンション価格の高止まりは、中古マンションの価格上昇にも反映していますが、リノベーションの普及など、購入者側の中古物件に対する許容度が上がっていることもあって、最近は中古マンションを選択することが当たり前になりました。
2000年には新築マンションの供給戸数と中古マンションの成約件数は80:20で圧倒的に新築が多かったのですが、2016年から逆転し、今では中古が50%以上のシェアになっています。
首都圏の新築マンション価格
出典:公益財団法人東日本不動産流通機構
https://www.retpc.jp/wp-content/uploads/toukei/202003/202003_2kaihatsu.pdf
2.購入時の注意点(物件種類別)
(1)新築の注意点
新築はプレミアムが乗っているため、購入直後に1~2割程度価格が下がることが一般的です。もし短期間で売却が予想されるような場合は、中古の方が安全ということになります。特に頭金なしのフルローンで購入すると、売却したくてもローンが完済出来ずに、売却そのものができないことになるので注意が必要です。
(2)中古マンションの注意点
①築年数は何年が買い時?
築浅物件は新築プレミアムが無く、さらに修繕の不要がない分お得と言えそうです。また築20年を過ぎると、価格の落ち方が穏やかになるという傾向があるので、築20年程度もお買い得と言えるでしょう。
②長期修繕計画はしっかり?
修繕積立金をしっかりを積み立てていれば、大規模修繕の際、値上げなんてことにならないので安心です。平均では50㎡で月1万円程度になります。ただし、修繕積立金の設定だけで判断すると、選択肢が減ってしまいます。将来、修繕積立金の値上げもあることを理解した上で選択するのも考え方次第です。
③リノベ済み物件の注意点
①で築20年を過ぎると、価格の落ち方が緩やかになるとお伝えしましたが、マンションのリノベーションはここが狙い目です。築30年超の場合は、不具合が出ることもあので、上下水道の配管状態は確認しましょう。「リノベ済み物件」はきれいな状態を見ることができて魅力的ですが、その分割高と言えます。また、売主が事業者のため建物部分に消費税がかかります。時間的余裕がある方は、物件を購入してからリノベをする流れの方がメリットを出し易いでしょう。
④旧耐震基準の物件は要注意
人気の中古物件ですが、耐震性には注意が必要です。1981年6月以降は法改正で耐震基準が強化されいるのでまずは一安心。もし旧耐震の物件を購入する場合は、耐震改修を行っているか確認が必要です。
(3)建売と建築のメリット・デメリット
建売とは、土地と建物をセットで販売されるもので分譲住宅とも言います。一方、建築は土地を自分で用意(購入)して、建築を工務店やハウスメーカーに依頼することです。
建売はパッケージ商品なので、価格を抑えることができ、すぐに入居できる物件も多数あります。建築はオーダーメイドなので、好きなデザインや間取りにできる楽しみがある一方で、価格が高くなりがちで、土地探しからやると入居まで1年を超えることもあります。
3.今家を買うべきか
(1)購入年齢に適齢期はあるか?
みんな何歳頃に家を買っているのか気になりますね。晩婚化もあって住宅購入年齢は徐々に上がってきているようです。しかし、購入するなら老後にローンを残さないように、できるだけ若い内にローンを組みましょうなんて話も聞きます。また、何歳で借りても返済総額は変らないですし、賃貸派の人が老後も家賃を支払っていることを考えると、遅く借りても問題はないようにも見えます。
実はこの問題は、適齢期のうような平均像を求めるのでなく、ライフプランや資金計画などそれぞれの個別事情をよく考慮することがとても大切なのです。事業者や知人の経験談だけに惑わされることなく自分の場合はどうなんだという目を持つようにしましょう。
(2)頭金を貯めてから買うべきか?
頭金をたくさん貯めた方が、借りるローンが少なくて、当然支払う利息の総額も減ります。ですから、頭金をできるだけ多く貯めてから購入することを希望する人も多いと思います。でも、本当にそうでしょうか?
頭金を貯めている間に支払う家賃の方が、利息削減額よりも大きければ、むしろその方がコストが大きくなりますね。低金利の今は多くの場合、頭金を貯めてから買う方が負担が大きくなる時代なのです。
だからと言って、頭金が要らないという訳ではありません。頭金が多ければ、返済額も小さく、負担が軽いことから、いざというときに耐えられる、すなわち安全性が高いということになります。またこのことから、ローンの借入条件は頭金が多い方ほど有利に働きます。
最近では、頭金を入れずに全額ローンで賄うケース(=フルローン)が増えています。また、諸費用までローンを使うケースも。
いずれにしても、損得だけで住宅購入の判断をするのでなく、将来の家計の姿であるライフプランを考慮に入れて判断しましょう。
4.価格・購入費用
(1)物件種類別の価格
さて、物件種類別の価格の平均値を見てみましょう。住宅金融支援機構「フラット35」の利用者データによると、首都圏では新築マンションの価格が最も高くなっています。また、それぞれの利用者の平均年収で割った年収倍率は6~7倍ですが、いずれの種類においてもここ10年増加傾向が見られます。
所要資金 | 年収倍率 | |
土地付注文住宅 | 4,993万円 | 7.7倍 |
建売住宅 | 3,915万円 | 7.0倍 |
新築マンション | 5,033万円 | 7.5倍 |
中古マンション | 3,392万円 | 6.2倍 |
※首都圏の平均値
※年収倍率は平均年収で除したもの
出典:住宅金融支援機構「フラット35利用者調査」
https://www.jhf.go.jp/files/400353155.pdf
(2)購入費用
購入時の諸費用を新築と中古に分けて概算を言うと次の通りです。
■新築:物件価格×5%
■中古:物件価格×8%
中古物件にかかる仲介手数料が、新築の場合はかからないという理由で新築を選択する方が時々います。しかし、新築物件には仲介手数料以上のプレミアムが価格に上乗せされて販売されているので、諸費用だけで損得の判断をすることは避けた方がよいでしょう。
5.まとめ
住宅購入は金額が大きいだけでなく、選択肢も多岐に渡るため、消費者にとっては、どうしても知識面で事業者にかなわないという側面があります。だからといって購入前の短期間に詳細な知識を詰め込むことは容易ではありません。せめて、木を見て森を見ずということにならないように、購入に関わる全体像を把握して後悔のないようにしておきましょう。
この記事を読んでもう少し詳しく相談したいと思われた方は、ファイナンシャルプランナー(FP)に相談してみましょう。不動産業者や金融機関とは違った立場で相談に乗ってくれるでしょう。
2020年2月8日
text by 久保田 正広
FPバンク