こんにちはFPバンク編集部です。
最近よく耳にするリバースモーゲージ。いったいどんなものなのでしょうか。
一種のローンであることは理解している人も多いと思いますが、あまり聞きなれないものだし、どんなリスクや注意点が潜んでいるのか気になりますよね。
この記事ではリバースモーゲージの内容からそのリスクや注意点までお金のプロであるファイナンシャルプランナーが一般的な情報全てを説明していきます。
正しく理解することができれば、今後の人生を後押ししてくれる良い商品としても活用できることでしょう。 是非、チェックしてみてください。
目次
1. リバースモーゲージとは?
リバースモーゲージとは自宅を担保にして銀行などの金融機関から融資を受けることができる高齢者向けの“ローン”のことです。
人生100年時代と言われる今、老後生活をより豊かにしたいという高齢者に注目される商品となっています。リバースモーゲージの「リバース」を直訳すると「逆」で「モーゲージ」は「抵当・抵当権」という意味になります。
通常の住宅ローンでは、最初にお金を借りて、それを毎月返済していくのに対して、リバースモーゲージは毎月お金を借りて、最後(死亡時)に借りたお金を一括返済するしくみから「逆住宅ローン」ともいわれます。
近年、リバースモーゲージの利用者も増えつつある傾向ですが、少し複雑な内容でもあるためそのメリットやデメリットをふまえてきちんと理解したうえでご利用を検討しましょう。
2. リバースモーゲージのポイント
(1)自宅に住み続けることができる
リバースモーゲージの最大の特徴(メリット)ともいわれる部分です。融資可能額はそれぞれの自宅の評価額に応じて決まってきます。
自宅を手放したくはないけど、その資産価値を活かして資金調達したいというニーズがあるかたにはぴったりの内容になっています。
(2)月々の返済負担が軽い
通常、借入をすると毎月は元本+利息の返済になりますが、リバースモーゲージの毎月返済は利息のみになるので負担は軽くなります。
なかには年齢や収入等について一定の条件を満たせば毎月の利息返済も必要のない種類もあります。
また、融資の受け方は一括で借りることもできますし、貸付限度額以内で必要なときに必要額を借りる方法もあります。
(3)資金使途はさまざま
リバースモーゲージで借り入れたお金の資金使途は「事業用・投資用」の目的以外であれば特に限定されない商品がほとんどで、日々の生活費をはじめ、自宅のリフォーム、住宅ローンの返済等にも充てられます。
しかし、住宅金融支援機構や市区町村の自治体等の公的機関が提供するリバースモーゲージの場合は住居関係や医療・介護費用の用途などに限定されますので注意が必要です。
(4)審査基準が比較的緩やか
実際の審査基準は金融機関等によって違いはありますが、自己または配偶者の名義で自宅を所有かつ居住していて、利用時の年収が120万円以上(公的年金含む)あればよいという条件が一般的です。
また年齢については55歳または60歳以上としているところがほとんどなので住宅ローンなどと比較しても差ほど厳しくないものとなっています。
(5)亡くなったときには一括返済が必要
元本返済は契約者が亡くなったときに一括返済が原則になります。
その返済方法は配偶者やお子様などの相続人による契約の引継ぎ、または相続人の自己資金等からの返済、担保物件の任意売却による返済などいくつかの手段があります。
3.5つの注意点
次に上記のポイントを押さえたうえで代表的な注意点を5つあげていきます。
(1)融資対象となる住宅に制限
そもそも担保評価となる自宅というのは土地を中心として評価してもらいます。
そのため自宅がマンションという場合だと土地と建物が分離しているので評価しづらく、建物の劣化による資産価値の低下も懸念されるため適応されないケースもあります。
その一例として築年数が20年以上や駅から徒歩10分以上の条件は難しいケースが多いので注意が必要です。
(2)推定相続人の承諾が必要
実際にリバースモーゲージを利用するとなると、推定相続人全員の承諾(同意)を必要とする金融機関が多いです。
契約者の死亡後は自宅売却が前提となると、そこに住み続けたいという意思がある相続人がいれば配慮しておく必要があります。
(3)長生きリスク
リバースモーゲージによる融資限度額というのは自宅評価によって決まっています。
長生きをすること自体は良いことですが、融資限度額を超えて資金調達が必要になってしまう可能性もあるため計画性が重要となります。
また、長期の返済リスクを抑えるために当初から期限付きの契約もあります。
たとえば、60歳から25年間の期限付き契約でリバースモーゲージを利用したとします。25年が経った85歳のときに契約者が生存していると一括返済が求められるため、場合によっては生存中に自宅を失うこともあるため注意が必要です。
(4)金利上昇
リバースモーゲージの適応金利は変動金利の場合が多いため、単純に将来、金利が上昇すると当然、毎月返済する利息もふえていきます。
ここ10年くらいずっと低金利が続いていて今の低い金利で見慣れてきましたが、このままずっと最低水準を維持したままの状態は考えにくいため、ある程度の金利上昇を前提として考えておくことをおすすめします。
(5)不動産価格の下落
リバースモーゲージの融資額は不動産評価額の50~80%程度の上限になることがほとんどです。
また、建物自体の価値は年々落ちていきますので、その評価額自体も年々下がっていくと考えるのが自然です。
そこで金融機関はこうした不動産評価を正しく査定するために、定期的に評価額の見直しを行っています。
契約時の評価が3,000万円だったとしても数年後に2,500万円まで下がってしまったということあれば、契約期間中であっても借りられる上限額も減ってしまい担保割れを起こしてしまう可能性があるということです。
また、その場合は超過分を一括返済しなければならないといったケースもあるため注意が必要です。
<関連コラム>年金だけで老後生活は送れる?送れない?
4.利用事例
上記のようにいくつかの注意点はあるものの一定の理解をふまえたうえでライフプラン上のメリットになり得るものであればいい制度でもあります。
ここからは具体的な利用事例をみていきましょう。
ケースⅠ:住宅ローンの借換
【モデルケース】
60歳男性 ・住宅ローン残債…約1,886万円 ・住宅ローン残返済期間…15年
【悩み事】 退職後、住宅ローンの返済負担が重い…。退職金はあったが老後の生活費のためにあまり手を付けたくはない。
【解決策】
【注意点】 毎月の負担は確かに抑えることができますが、住宅ローンそのままで返済しきったときよりも総支払額が増える場合があります。
ケースⅡ:リフォーム資金
【モデルケース】 70歳女性 ・要支援1
【悩み事】 まだまだ元気で一人で生活する分には問題ないけど、家のなかのちょっとした段差が気になるようになってきた。今後のために家をバリアフリーにしてもっと住みやすい家にしたい。
【解決策】
【注意点】 高齢者向け返済特例制度(※)に関しては「バリアフリー工事」や「耐震改修工事」を含むリフォーム以外の資金使途には利用できないとされています。
5.リバースモーゲージ以外の選択肢
(1)リースバック
リースバックとは自宅に住み続けながら資金調達ができるという利点はリバースモーゲージと一緒ですが、そのしくみと特徴は全く異なります。
リースバックはまず自宅を不動産会社などに売却をして、その買主であるオーナーに対してリース料(家賃)を支払います。
その売却代金は一括で受け取れるため、ある程度まとまったお金が必要な場合の資金調達にも有効です。
さらにリバースモーゲージは利用にあたって50~60歳以上と年齢制限があるものに対してリースバックは年齢制限を特に設けていないことがほとんどです。
また、リースバックは買い戻しもできるため、今すぐではないが将来的に大きなお金が用意できる見通しがあれば、買い戻しも視野に入れて利用するメリットもあります。
(2)マイホーム借り上げ制度
これは一般社団法人 移住・住みかえ支援機構(JTI)が提供するもので、50歳以上のシニア層のマイホームを借り上げて転貸し、安定した賃料収入を保証してもらい自宅を売却することなく住みかえや老後の資金として活用することができる制度です。
入居者とは3年毎などの定期借家契約を結ぶため、将来的に自宅に戻ってきてくることができたり、売却することもできるメリットがあります。
また、空室時にも賃料保証があるため、年金の上乗せとして安定的な収入が見込めます。
しかし、あくまで人に貸して賃料を得るものなので自宅に住み続けることはできないので、意向に沿わないといった場合は他の手段を検討しましょう。
また、築年数が古い家だと耐震改修工事が必要となり、その費用はオーナー負担となり初期に数百万などの大きな出費を伴うこともありますので注意が必要です。
6.まとめ
ここまでがリバースモーゲージについての説明でしたが、意外と考慮すべきことが多いなと思われたかたも少なくないのではないでしょうか。
メリットやデメリットを理解したうえで利用する分にはよい制度となりますが、利用せずに済むのであればそれが一番です。
そのため、まずは老後の資金繰りに悩むことがあれば身の回りの収支改善をはじめ、固定費などの見直しを考えてみましょう。
生命保険の見直しなども大きな効果となることもあります。
いずれにしてもどう判断していけばよいかは目先の損得だけでなく、もう少し先を見据えたライフプラン全体をみたうえで決めていきましょう。
自分や身内だけで考えるのは難しいと思うようであればお金の専門家ともいわれるファイナンシャルプランナーに相談してみるのもよいかもしれないですね。
2020年7月18日 text by 久保田 正広 FPバンク