離婚が決まったら住宅ローンはどうするべきか

手を組み話し合う男女

こんにちはFPバンク編集部です。

実は離婚後の家計相談が最近増えています。

離婚という選択は責められるものではありませんが、お金の問題はクリアにしなければ今後の生活の大きな重しになってしまいます。

そんなあなたに、このコラムでは離婚時の住宅ローンにおける解決方法を解説します。

このコラムを読むことで離婚後の生活への見通しが明るくなり今すべきことがわかります

楽しい新生活を送れるように、もうひと頑張りしましょう。

1. 離婚すると住宅ローンはどうなるのか

離婚はとても気力と体力がいるものと皆さんおっしゃいます。

円満な離婚だったとしてもこの先住宅はどうすればいいのか、財産はどう分けるべきか、子供の親権、今後の生活はどうすればよいのか。

元夫婦で話し合いそして解決しなければいけないことは沢山あります。

このコラムではこの中でも、住宅をどうすべきか、住宅ローンをどうすべきかという話に絞って解説していきます。

一般的には売却というアドバイスが多いですが、住み慣れた家・環境・お子さんの学校・保育園etc簡単には今の住宅を離れられない人も多いはずです。

ここではいくつかの選択肢を提示していきたいと思います。

2. 今の住宅に住み続けるには何をすべきか

状況によりアドバイスは変わりますので場合分けして解説していきます。

ちなみに、離婚時の住所変更や所有者名義の変更は銀行など借りている住宅ローンの金融機関への報告は必要となりますが、郵送物など連絡がきちんと取れ支払が滞らなければ基本的には一括返済を求められることはありませんので、その点のご心配は少ないと思います。

(1)住み続ける人が、単独名義でかつ単独で住宅ローンを借りている場合

この場合住宅ローンの契約者に変更はなくそのまま居住することになりますので基本的には住宅ローンに関する手続はいらないということになります。

ただしどちらの名義かを問わず住宅や住宅ローンは離婚時の財産分与の対象になります。

この点は離婚時の夫婦間の協議で話し合っていく必要はあります。

(2)出ていく人が、連帯保証人になっている場合

この場合には離婚したので外してくださいといっても外してくれるケースは少なく。住み続ける一方が新たな配偶者やご両親など新たな連帯保証人を入れることで解決する。もしくは別の金融機関で連帯保証人をつけずに借り換えることで解決できます。

新たに連帯保証人になってくれる人は簡単に見つからない場合も多いので借り換えが現実的な解決策だと思います。

すべての金融機関で借り換えられるわけではありませんが連帯保証人は不要という金融機関も増えており充分検討に値すると思われます。

放置をすれば、住宅ローンの主債務者が滞納した場合などに支払を求められる可能性もあり。売却するなどで住宅ローンがクリアにできればよいですがそうでない場合には、競売などで不動産が安く処分されてしまい大きな債務が残ってしまうことも考えられます。

早い段階で解消に向けて動き出すことをお勧めします。

(3)住み続ける人が、共有名義で単独で住宅ローンを借りている場合

一方が購入時に頭金を出し一方が住宅ローンを単独で組んだ場合に起こるケースです。

この場合にも住宅ローンの契約者に変更はなくそのまま居住することになりますので基本的には住宅ローンに関する手続はいらないということになります。

では頭金を出したにもかかわらず住宅を出ていく夫婦の一方はどうすればいいのか。

この先住むことがない元配偶者の住宅に所有権の一部を持っていても何のメリットもないどころか、この先ずっと名義が残ってしまいます。

住み続ける一方にしても住宅の売却や住宅ローンの借換えをする場合などは共有名義人の協力を得なければならずかなり不便となります。

離婚時の財産分与をどうするかにもよりますが出ていく一方の持分を解消しておくことをお勧めします。

財産分与として金銭授受なく相手方に共有持分の所有権を譲渡する場合もあれば、金銭による対価を支払い共有持分の所有権を取得する場合もあるでしょう。

不動産の共有状態というのは後々の不都合になる場合が多く、早い段階で解消することをお勧めします。

金融機関側としては不動産の所有名義が共有から単独所有になることでデメリットはありませんので反対されることはないです。

共有の解消に関して夫婦間で協議ができれば後は司法書士に依頼をして登記名義の変更の申請をすればOKです。

(4)住み続ける人が、共有名義でペアローンや連帯債務で借りている場合

この場合は少し複雑です。

住宅ローンを夫婦共同で借りており、それぞれが住宅ローンに関して責任を負っているからです。

金融機関としても夫婦お二人の信用を合わせて住宅ローンを貸していますので離婚したからというだけで住宅ローンを単独名義に変更してくれることはまずありません。

ではどうすべきか、難しいといって放置することは不利益が大きいです。

そのまま住む側から考えればペアローンの場合、相手方の支払いが止まってしまっては債務不履行によるペナルティを負わされる可能性がありリスクが高いです。

連帯債務の場合も出ていく側の銀行口座が返済口座に指定され変更しないままにしておくと同じように支払いが止まってしまった場合に債務不履行のペナルティを追う可能性があります。

① ではどうすればよいのか、最初に考えるのは、今借りている金融機関に住宅ローンを単独名義に切り替えることを交渉してみましょう。

ただし、もともと2人の信用で借りていたものを単独にするにはハードルは高く認められないことが多いと思った方が良いです。

認められた場合には債務者から外れる方の持ち分を買い取るのか、財産分与で譲渡してもらうのか所有名義についても単独に切り替える必要があります。

② 次に考えるのは①の場合で、今借りている金融機関とは別の金融機関で住宅ローンを組み直すという方法です。

諸事情に応じて柔軟に対応してくれる金融機関もあり、住宅ローン債務の移転や共有持分の移転の価値の妥当性を担保するために、不動産仲介業者など第三者をいれるなど工夫は必要ですが①よりは認められる可能性が大きくなります。

③ 次に考えるのは、新たに債務者を追加することで、元配偶者を債務者からはずすことです。

現実的には難しいかもしれませんが、単純に債務者を一人はずすことにはOKがでない場合は多いですが、新たな配偶者やご両親など収入のある債務者を一人追加することで交渉が認められる場合はあります。

共有持分の整理に関しては①と同様です。この③も今借りている金融機関では認められないことは多いですが②同様、別の金融機関で住宅ローンを借換えや新たな住宅ローンを組むことで解決する場合も多いです。

(5) 出ていく人が、単独名義でかつ単独で住宅ローンを借りている場合

住み続ける一方が住宅ローンの債務者でもなく所有名義もない場合どう考えればよいのでしょうか。

この場合この離婚時の財産分与の話し合いにおいて住宅の所有権をどちらが持つかによって対応が変わります。

① 所有名義もそのままで住宅ローンもそのまま元配偶者がそのまま居住する場合。

この場合には出ていく側の住宅ローン債務者の住所変更届をだしそのまま支払いを滞りなく継続すれば問題は起こらない可能性が高いでしょう。

② 出ていく一方ではなく、住宅ローンの債務者ではない元配偶者に住宅の所有権を移転する場合。

この場合住宅ローンの債務者である一方がローンの支払を続けてくれれば問題はないし、所有権が住み続ける側あるため勝手に売却されないなどのメリットはありそうです。

住宅ローンの抵当権負担がついている所有名義の変更なため支払が問題なく継続されれば金融機関が反対しない場合もあると思います。

ただし所有権もなく住宅ローンの支払を続けてくれるかどうかは問題です。

支払状況も住み続ける側が確認することも基本的にはできないためローンの支払いがかなり滞った時点で住宅が差し押さえされてしまうリスクがあります。

こういうリスクを懸念して銀行側が名義変更に難色を示す場合もあります。

また、住宅ローンの引き落とし口座は原則として主債務者本人の口座でなければいけないので引き落とし口座の変更もNGです。

ではどうするべきか、この場合売買という形で、所有権の移転をしその際に、別の新しい金融機関から住宅ローンの融資をうけ、もともとの住宅ローンは一括返済するという方法が考えられます。

支払は新たな所有者が返済義務を負うことになります。離婚時の財産分与で出て行く側に支払い義務があるのであれば、金融機関に支払をさせるのではなく、直接本人に振り込みなどで支払ってもらうことになるでしょうか。

その支払いが滞ればすぐに気付きます。ただし公正証書などで支払い義務をきちんと約束しておく必要があります。

(6) 出ていく人が、共有名義で単独で住宅ローンを借りている場合

住宅に住みつづける一方が頭金など自己資金を出し、出ていく一方が住宅ローンを単独で組んだ場合に起こりうる場合です。

基本的には、他人となってしまった元夫婦で不動産の共有名義を残しておくことは今後の不動産の処分や将来おこる相続を考えれば避けるべきです。

① 対処方法としては出ていく一方に所有権を統一する場合には、金融機関に所有名義変更の申請をし、司法書士に依頼し登記名義を変更すればよいでしょう。

② 住み続ける一方に所有権を統一する場合には(5)②と同様に、売買という形をとり新たな金融機関で住宅ローンを組んで所有権の名義を統一することになるでしょう。

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3. 今の家に住み続けるポイント

(1) 住宅ローンの解決方法

基本的に住宅ローンの債務者も、住宅の所有権の名義もかわらないのであれば離婚されたとしても返済さえ滞らなければあまり心配することがないと思います。

ただし、住宅ローンの債務者や保証人を変更する、住宅の所有権名義を変更するということに対しては今借りている金融機関がリスクを避けるために難色を示す場合が往々にしてあります。

ただここで諦めるのではなく別の金融機関を必ず当たってみましょう。柔軟に対応してくれる金融機関があるはずです。

(2) 所有権名義の解決方法

離婚された場合には、所有権の名義をどちらか一方に統一することをお勧めします。

勝手に処分されないように意図的に持分を残しておくこともありますが。いつ何がおこるかわからず、いずれ不動産の処分や相続が起こりうることを考えできれば、離婚時の財産分割協議においてきちんと清算をし一本化しておくことをお勧めします。

不動産の共有は問題の先送りである場合が多くもめごとの種であることがとても多いからです。

4. 今の家を売却する

(1) 住宅ローンの残債以上の高値で売れる場合

この場合には基本的に問題になることはありません。

残ったお金をどう分けるのか、一方が頭金を出していた場合にどう清算するのかを離婚時の財産分割協議で取り決めをしておけば問題なく通常通り不動産業者に売却を依頼すればOKです。

(2) 売却しても住宅ローンの残債を返し切れない場合

この場合手元に現金があり、売却金額と手元の現金を合わせて住宅ローンを一括返済できれば(1)と同様でそんなに問題はありません。

ただ、手元に現金がなく、住宅ローンの残債が残ってしまう場合には通常の売却はできません。

この場合には任意売却という選択肢があります。任意売却とは売却後住宅ローンが残ってしまうような場合でも事前に金融機関と相談して承諾を得て住宅売却をする方法です。

金融機関としては、売却後に担保がない状態で返済を継続してもらうことになるため、必ずしもOKをしてくれるわけではなくのですが。相談をしてみる価値のある選択肢だと思います。

<関連コラム>女性目線で考える「離婚の時に必要な保険」はこれだ!

5. まとめ どこに相談すべきか?

離婚をされ心身ともに疲れているなかで、住宅ローンをどうするか?住宅をどうするか?

この難しい問題はどこに相談しにいくべきでしょうか。

この問題の難しいところは、おそらく相談に行く先で答えが変わってしまうというところです。

相談先としては当然自身の利益が多い解決策に誘導しがちです。このケースでいうと売却をしましょうというアドバイスが結果的に多くなるのではと思います。

たしかに売却をすることで権利関係はスッキリしますが、お子様の学校、この先の住まいはどう考えればいいのでしょう。

売却ありきではなく、ご相談主の現状に合わせて出来る限りの選択肢をアドバイスしてくれる、そんな相談先が理想なのではと思います。

特に残った住宅ローンをどう解決するのかというのは非常に難しい問題です。

相談先の中でも住宅ローンに精通しているところ、特定の金融機関ではなく幅広い選択肢をアドバイスしてくれる住宅ローンに強いFP事務所がおそらくベストな選択肢の一つになると思います。

弊社に相談にいらっしゃる方でも『無理だと思うんですけど』と、他所で選択肢を提示されず解決方法はこれしかないという提案をされ恐る恐る相談にいらっしゃる方がいます。

もちろんすべてのケースで希望の解決策が導けるわけではないですが、ぜひ諦めずに相談にいらしてください。

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2020年9月1日
text by 久保田 正広
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