こんにちは。FPバンク編集部です。
気に入った住宅が見つかって申込みをすると、一般的に住宅ローンの事前審査に申し込むことになります。
ある程度住宅ローンの仕組みについてはご存知の方でも、いざローンを選ぶ段階になってみると、最長35年の長期でローンを組むにあたり、今後の金利水準の変化をどう捉えたらいいのか、お困りの方も多いのではないでしょうか。
人生で一番大きなお買い物とも言われる住宅購入ですが、生涯でそう何度も購入するものでもないですし、大きなお買い物なだけに、出来る限り失敗は避けたいですよね。
そこで今回は、過去の住宅ローン金利の推移を振り返り、現代はどのような金利水準に当たるのかを理解し、今後どのように変化していくのかを考える道標をあなたと一緒に考えて行きたいと思います。
今後、金利水準は変わらないのか、それとも急激に上がるのか。
正確に予測することは誰にもできませんが、基本的な考え方を学ぶことで、ある程度今後を予測し、変化に対して備えることができるはずです。
住宅購入後に安心して暮らしていくためにも、住宅購入を失敗しないためにも、是非チェックしてみてください。
目次
1. 過去の金利推移
(1)変動金利の推移
それではまず、過去の住宅ローンの金利の推移を確認してみましょう。始めに変動金利の推移です。
※参照:日本銀行調査統計局〔1978年(昭和53年)から経済統計月報、1998年(平成10年)以降は金融経済統計月報〕「都市銀行の住宅ローン金利」
1980年ごろ9%近くあった金利が徐々に下がり、1990年ごろにバブル景気で金利は上がりましたが、バブル崩壊とともに一気に金利は下がり、1996年以降は2%代半ばをほぼ保っています。
特に2009年からは2.475%から10年以上も推移していません。
ただし、この2.475%は「基準金利(店頭金利)」といって実際にローンを借りるときの金利ではありません。
実際に借りる際の金利は、この基準金利から各銀行ごとの基準+お客様ごとの審査結果で「基準金利から△2%」など優遇幅を決めて貸し出します。
この時の金利のことを、「適用金利(実行金利)」と言います。
現在、実行金利の最低水準は、おおむね0.4~0.5%程度です。これは過去から見ても史上最低水準です。
現在と一番金利が高かった頃とを比較すると、実に18倍ほどの金利差があります。
(2)固定金利(全期間固定金利)の推移
では次に、固定金利の推移を見て見ましょう。
※参照:住宅金融公庫・住宅支援機構「基準金利」
1980年代や1991年のバブル期をトップとしている点は変動金利の推移とも共通の動きですが、最高金利は5.5%程度です。
バブル後、金利は急降下し、2006年に4%弱まで盛り返しますが、その後はどんどん下がり続け、現在は1.0~1.3%程度です。
変動金利の基準金利が1995年からほぼ変化なしなのに対して、固定金利は1995年水準の約1/3の金利に下がっています。また、金利の落差は6倍程度に収まっています。
(3)固定期間付き変動金利
他にも、変動金利の一種にはなりますが、「5年固定」や「10年固定」など固定期間は金利が変わらず、固定期間の終了とともに再度変動か固定かを選べるタイプのものもあります。
これらの金利水準に関しては、変動金利と全期間固定金利の「間の金利」となりますが、この仕組みは固定期間が短くなるほど顧客のリスクが増し、固定期間が長くなるほど金融機関のリスクが減るため、一般的に固定期間が短いほど金利は低く、固定期間が長いほど金利は高い傾向にあります。
<関連コラム>コロナショックで長期金利も上昇!?長期金利と住宅ローンの気になる関係
2. 金利のしくみ
(1)どうやって変わる?
では、変動にせよ固定にせよ、基準金利は何によって決まるのでしょうか。
まず、変動金利の基準となるのは短期プライムレートと言って、日銀の政策金利を参考に、各銀行が設定した数値です。
これが10年前からほぼ変わらず1.457%のままなので、これに1%を上乗せした基準金利もずっと、2.475%のままで推移しています。
また、変動金利の特色として、日銀の政策金利を基準としているため、「現在の景気観」を反映しやすいという特性を持っています。
これに対して固定金利は、長期プライムレートと言って、10年物国債の利回りを基準としています。10年物国債の利回りは機関投資家の取引市場によって変化し、決定されます。
長期運用商品のトレードによって決まってくる値になるので、「今後の景気観」を反映しやすい指標とされています。
(2)今後の予測は?
まず、変動金利に関しては0.4~0.5%という過去最低の超低金利水準です。
本来、金利が金融機関の利益になりますが、ローンを貸す上で様々なコストがかかっています。
企業努力にもよりますが、通常0.5%ほどコストがかかるところに0.4%で貸しているのですから、収支はトントンか赤字と考えるのが妥当でしょう。
各金融機関は基準金利からのダンピング合戦でもうほぼこれ以上金利を下げられないところまで利益を食いつぶしてしまっています。
そのため、住宅ローンの金利単体では差別化や利益化することができず、団信の保障範囲で差別化を図ってみたり、つみたてNISAの口座開設とセットで金利を下げるなどして収益化を図っています。
そんな現状ですから、もうこれ以上、金利が下がることは望めませんし、住宅ローンがマイナス金利、つまりお金を借りた方が増えるということはあり得ませんから、今後の金利の推移としてはこのままもう何年か横ばいのままか、もしくは上がるしかないでしょう。
過去からの長い期間の金利の推移を見てもそれは明らかですが、現状、日銀の政策金利は△0.1%のマイナス金利を適用することになっているため、当面の間は変動金利の金利水準も、低いままを保つことが予想されますが、問題は「この低金利がいつまで続くのか」ということでしょう。
金利水準が「今後20年間変わらない可能性」を考えると、それはそれで可能性は低いと言えるでしょう。
実際、固定金利の基準となる10年国債の利回りに関して、徐々に上昇してきています。
(3)どのくらい変わる?
そう考えると大切なことは、今後金利が上がらないだろうとヤマを張ることではなくて、仮に金利が上がった場合に備えて、対策を打っておくことではないでしょうか。
そう考えた場合、まず押さえておくべきは、変動金利が上昇した場合のルールを把握しておくことです。
変動金利の上昇局面では、「5年ルール」と「125 % ルール」という2つのルールが適用されます。
このルールはどういうものかというと、「たとえ金利が上がったとしても、毎月の返済額は5年間変えませんよ」というものと、「仮に5年後に返済額が上がったとしても、一度に125%までしか上げませんよ」というルールです。
例を挙げると、住宅ローンの支払額が月10万円だった場合、金利水準が上がったとしても返済額は5年間10万円のままですよ、もし5年後に返済額が上がったとしても、12万5千円までしか上げませんよ、ということになります。
ではここで、仮に5,000万円のローンを35年間借入れした場合、
① 変動金利0.5%で35年間金利が変わらなかった場合
② 固定金利1.2%の場合
③ 変動金利0.5%で借りた後、5年ごとに金利が1%ずつ上がった場合
の3パターンをシミュレーションしてみましょう。
まずは①と②を比較してみましょう。
これだけ見ると、当然、金利の低い変動金利に軍配が上がります。
しかし③を見てみましょう。
となります。
総返済額だけで比較してみても、
① 5,451万円
② 6,126万円(+674万円)
③ 7,277万円(さらに+1,151万円)
となり、①と③の差で比較すると、1,826万円もの差が生まれてきてしまうのです。
このように、固定金利でローンを組む場合は、金利が変らないので返済額も変わることがありません。
それに対し、変動金利でローンを組む場合には、このような金利上昇に対して、充分な対策を講じておかなければなりません。
<関連コラム>10年固定の住宅ローンのカラクリ大公開
3. 金利の変化に対応するには
(1)金利が下がった場合
ここで、金利の変化に対する策を考えてみましょう。
まずは固定金利でローンを組み、金利水準が下がってきた場合に関してですが、ある程度の金利差が発生していれば、借換えを検討しましょう。
ただし、残りの返済期間が短い場合はメリットも少ないので、借り換えの手数料と諸費用、返済総額を比較して、メリットが出るかどうか、しっかり確認しましょう。
次に、変動金利でローンを組み、金利水準が下がってきた場合は、まさに変動金利でローンを組んだメリットが生かせるときです。
金利の動向をしっかり確認して、返済額減少のメリットを享受しましょう。
(2)金利が上がった場合
次に、金利が上がった場合です。
固定でローンを組んでいれば、もう何も怖がることはありません。金利の低いうちに固定金利を選択できた自分を褒めてあげましょう。
また、変動でローンを組んで金利が上がってしまった場合ですが、返済額の上昇を少しでも抑えるために、繰り上げ返済を検討しましょう。
金利が上がると毎月の返済額は上がらなくても、その内訳はしっかり再計算されて変わっています。
支払額に占める金利の割合が高くなり、元本割合が低くなっているのです。
そうするとなかなか元本を返済できなくなり、金利が膨らんでいくだけですので、少しでも元本を早めに減らすために、繰り上げ返済をすれば良いのです。
結果、それほど返済総額が多くならなければ、低金利の恩恵を享受したと言えるでしょう。
4.ローン金利以外の指標
最後に、住宅を購入するにあたり、気にすればいいのは住宅ローンの金利だけではありません。
ローンの金利の他にも土地の価格や建物の価格、戸建てやマンションによっても値動きの仕方が違います。
下のリンクからグラフを見てもらえれば一目遼前ですが、土地や戸建て住宅の価格上昇率に比べて、マンションの価格高騰は異常です。
現況ではマンションを売る側にとってはチャンスと言えるでしょうが、買う側からしたら高値づかみになるかも知れません。
一方で、不動産は同じものが2つとありませんし、市場に出てくるタイミングも自分の欲しいタイミングに合うとは限りません。
自分の気に入った不動産に巡り合えた時を買い時と捉えるか、値下がりするのをじっと待っていられるのか。
購入を待てば待つほど賃貸の家賃もかかり続けますし、はたまた転勤にでもなった時、果たしてその物件はいくらで売却できるのか。これもまた難しい問題です。
令和2年2月不動産価格指数(住宅)
出典:国土交通省
<関連コラム>住宅購入の資金計画と住宅ローンの相談はFPへ
5.まとめ
最後にまとめになりますが、住宅ローンの金利予測を正確に行うことは誰にもできません。
ただし、予めルールを知り、シミュレーションをすることはできます。
金利が上がってしまうのであれば、繰り上げ返済を考えたり、最初から頭金を多くして返済額を減らしたり、返済期間を短くして、金利の割合を少なくすることもできます。
同様に、住宅の買い方やタイミングや予算なども、自分の人生設計に合わせてあらかじめシミュレーションしておくことで、不測の事態を避けられます。
大切なのは、自分が今後どう生きて行くのか、人生における優先順位は何なのか、その中で住宅はどのくらいの割合を占めるのか、もしもの場合の対策はしっかり立てられているのか。
あなたのライフプランに合った選びかたを選択してもらえれば、後悔も失敗もない住宅購入がきっと叶えられるはずです。
是非一度、あなたの人生と真剣に向き合う機会を作ってほしいと思います。
2020年7月24日
text by 久保田 正広
FPバンク