扶養の範囲で働いてはいけない!?

ライフプラン相談を日頃受けていると、奥様からよく出てくるのが「扶養の範囲で働きたい」というキーワードです。本当にそれでいいのか?について、今日は考えてみます。

1.扶養の範囲で働くメリット

扶養には、税金の「扶養範囲」と、社会保険の「扶養範囲」があります。

妻が税金の「扶養範囲」で働けば、夫の税金が安くなります。
妻の収入が給与所得のみで年収150万円以下の場合は、配偶者控除または配偶者特別控除という所得控除が受けられ、夫の所得税・住民税が年間8~10万円くらい安くなります。
150万円を超えると控除の額が順次減少し、201万円を超えると税金の「扶養範囲」から完全に外れます。

妻が社会保険の「扶養範囲」で働けば、妻の社会保険料負担が不要となります。
妻の収入が年収106万円(月収8.8万円)未満の場合は、夫の健康保険の被扶養者や公的年金第三号被保険者となり、妻の社会保険料を別途負担する必要はありません。
106万円以上になると、妻が勤務先で社会保険に加入しなければならない場合があり、その場合は家計に新たに妻の社会保険料の負担が生じます。
130万円以上になると、社会保険料の「扶養範囲」から完全に外れます。

せっかく大変な家事をこなしつつ、頑張って働いても手取りを減らされてしまっては意味がない・・・。そこで、この扶養の範囲にこだわる方が多いのです。

2.でもやっぱり「扶養の範囲にはこだわるべきではない」と考える理由

(1)公的年金受取額が大きくなる

なぜなら、奥様が老後にもらう「公的年金」に大きな影響があるからです。

一般的に、女性の方が長生きと言われています。人生100年時代と言われるように、60歳からの平均余命のデータをみると、現在では90歳以上生きるのは当たり前になってきています。そんななか日本の年金財政はどうかというと、このまま少子高齢化が進展すると、干上がってしまうではないか?という事が、現実的な心配となっています。

とすると、ご主人の扶養の範囲で、最低限の年金保険料を負担しているだけの奥様の年金ではどんどん削減されて小さくなるばかり、となる恐れがあります。
ご主人が生きていれば問題は小さいかもしれませんが、先立たれてしまった場合はどうでしょう?遺族年金とご自身の年金との合算の少なさに愕然とするはずです。

扶養の範囲にこだわらずに働くことができたら、自分の年金を大きくする事ができます。厚生年金は、受け取る年金は加入時の収入水準を反映して大きくなり、何より会社も保険料を負担してくれるので、たとえ公的年金全体が縮小するとしても、利用しないのは勿体ない制度だと思います。

(2)働く力、稼ぐ力をつける、伸ばす

また、少子高齢化の中で「女性が働く」「長く働く」ことが、ますます求められる社会になりつつあります。

そんな中では、女性の働き方にブレーキをかける「扶養範囲」は見直される方向にあり、そうすると「扶養範囲」を守るメリットは今よりも小さくなっていくと想定されます。

むしろ、これから未だ長い将来を考えると、「扶養範囲」にこだわらず働き、働けるうちに仕事を確保する、働く力・稼ぐ力をつける事が大切かもしれません。

3.そうは言っても

そうは言っても主婦業は大変です。
子育て、家事、ご主人が協力的な場合はよいですが、ご主人も仕事が忙しく、とても奥様が働きに行くどころではないご家庭もあると思います。
そういう場合は、出来るところから少しずつでも、自助努力で老後の資金を確保する、という考えを持っていただきたいと思います。
奥様の老後資金、とても大事なテーマなんです。

 

2019年9月27日
text by 久保田 正広
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