今買うなら新築マンションが断然お得!」と言われたが果たして本当だろうか。人生で最も大きな買い物といわれるだけに、失敗はしたくない。住宅ローン控除の仕組みとは?本当にお得な住宅の選び方とは??
1.住宅ローン控除は本当にお得か
住宅購入の際、一般的には住宅ローンを使って住宅を購入します。 その際、「今は金利が低いので、住宅ローンを組むと住宅ローン控除でお金が増えて戻ってくるんですよ」と言われたことありませんか?
なかなか分かりにくい住宅ローンの仕組み。まずは住宅ローン控除からご説明しましょう。
①住宅ローン控除の仕組み・逆ザヤ理論
住宅ローン控除とは、住宅購入の際、申請することによって、住宅ローンの借入残高の1%が10年間、戻ってくる制度です。
そのため借入金利が1%より低ければ、住宅ローンの利息より申請によって戻ってくる金額の方が多くなるので、お金を借りているのにも関わらず儲かってしまう、というわけです。
また、マンションの個人間売買の様に、売り手がプロではない場合の売買の場合は、消費税がかかりません。消費税がかからない分、プロから買うよりも安く買えるため、住宅ローン控除の対象となるローン残債の上限は2,000万円です。
つまり、2,000万円の1%=20万円✕10年間=200万円が控除されて戻ってきます。
それに対し、新築マンションのように不動産業者(プロ)が直接販売している物件は、消費税がかかります。 消費税のかかる物件はかからない物件に比べて購入金額が高くなりますから、その分、住宅ローン控除の対象となるローン残債の上限額も、4,000万円と高額になっています。
つまり、4,000万円の1%=40万円✕10年間=400万円が控除されて戻ってきます。
ですので、 住宅ローンを組むと住宅ローン控除の分、お金が増えて戻ってくるとはある意味では間違っていません。また、どうせ住宅ローン控除を使うなら中古物件よりも新築物件の購入時に住宅ローン控除を使う方が、オトクに物件を購入できるとも言われています。
しかし、本当にそんなにお得なのでしょうか。
②新築マンション購入の場合
新築マンションの場合で考えてみましょう。
5,000万円の物件を、フルローン(借入金額5,000万円)で購入した場合を考えてみましょう。
物件価格:5,000万円
消費税:200万円(建物2,000万円)
登記費用:30万円
ローン費用 :100万円
仲介手数料 :0万円
ローン利息:50万円(0.5%35年)
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小計:5,780万円
住宅ローン控除:△400万円
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合計:5,380万円
このように住宅ローン控除を踏まえると、総額5,780万円の物件を5,380万円で購入できたことになります。確かに一見、オトクに買い物が出来たように見えます。
ただし、不動産の価値について見てみると、新築マンションに2割~3割程度の利益が乗っているため、仮に利益を3割とすると不動産の資産価値としては、5,000万円から5,000万円の3割=1,500万円を引いた残り、3,500万円の価値しか残っていない事になります。それに対して住宅ローンは5,450万円残っている。
つまり、買った瞬間から債務超過の状態になります。
③中古マンション購入の場合
中古マンションの場合を考えてみましょう。
中古マンションの個人間売買のように、業者からの購入でない場合、消費税はかかりません。そのため、住宅ローン控除の上限額は2,000万円になります。
新築5,000万円のマンションと同程度の価値の中古マンションを3,500万円で購入し、フルローン(借入れ金額3,500万円)を組んだ場合を考えてみましょう
物件価格:3,500万円
消費税:0万円(建物1,000万円)
登記費用:20万円
ローン費用:70万円
仲介手数料:110万円
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小計:3,700万円
住宅ローン控除:△200万円
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合計:3,500万円
このように中古マンションの場合は、3,700万円の物件を3,500万円で購入することができました。
お得感は確かに減りますが、不動産の価値で考えてみると、中古マンションはすでに新築プレミアム部分の利益が入っていないため、不動産価値と売却価格の差は、ほぼイコールになります。
そのため、住宅ローンの借入残高が3,500万円に対し、不動産の価値もほぼ3,500万円のため、ローン残高と不動産価値の差額は新築に比べて小さくなります。
2.家を買うということ
ここまで住宅ローン控除と不動産の資産価値の話をしてきましたが、あなたは何のために家を買おうと思っていますか。家族のためでしょうか。自分のためでしょうか。リラックスできる空間が欲しいからでしょうか。効率的に仕事を進められる空間が欲しいからでしょうか。自分の城が欲しいからでしょうか。安心して暮らせる場所を確保したいからでしょうか。
確かに資産価値や相場観、適正価格などは気になるところですが、投資用の不動産ならいざ知らず、自分が住むための家であるならば、少しでもオトクに買うことよりも、自分が本当に気に入れる物件かどうか。この先も長く暮らしたいと思える家かどうか、の方が大事ではないでしょうか。
世の中にはお得情報が溢れ、少しでも損をしないためには、というような文言で消費者を常に煽ってきます。しかし結局はそれらも売り手側のセールストークにすぎません。本当に自分が買いたい家はどんなものなのか。どうして家を買いたいと思ったのか。
適正価格の範囲の間であれば正しく価値を認めて購入する。それが本来の正しい住宅購入のあり方ではないでしょうか。
住宅は購入したら終わりではありません。そこからが始まりです。是非、皆さん一人一人の楽しい暮らし。幸せな毎日を過ごしていただければと思います。
2020年5月11日
text by 久保田 正広
FPバンク