こんにちはFPバンク編集部です。
老後2000万円問題が話題になり老後の生活費が不安ですという相談が増えました。
年金も信用してよいものか、見通せない未来は不安になりますよね。
そんなあなたに、実際に必要な老後の生活費とそのシミュレーションをお伝えします。
このコラムを読むことで老後への見通しが明るくなり今すべきことがわかります。
ゆとりがあって楽しい老後の生活を送れるように、今から少しずつ準備をしましょう。
目次
1. 老後の生活費は実際にいくら必要なのか、その平均を知る
(1)実際にいくら必要なのか知ることが出発点
まずは、2019年総務省家計調査報告のデータを見ていきましょう。
① 高齢夫婦無職世帯の生活費(夫65歳以上・妻60歳以上夫婦のみの無職世帯)
食費 |
¥66,458 |
住居関連費 |
¥13,625 |
水道光熱費 |
¥19,983 |
日用品・家具など |
¥10,100 |
洋服など |
¥6,065 |
医療関連費 |
¥15,759 |
交通費・通信費 |
¥28,328 |
教養・娯楽 |
¥24,824 |
その他雑費 |
¥29,057 |
交際費 |
¥25,749 |
税金・社会保険 |
¥30,982 |
合計 |
¥270,930 |
高齢者夫婦の実際にかかる生活費の平均は月額約27万円という結果になっています。
注意点としては、住居関連費は月額13,525円となっており、すでに住宅を購入済でローンを完済しているということが予測できます。賃貸住まいの方、住宅ローンの支払いが終わっていない方はここに上乗せして考える必要があります
総務省の家計調査によれば夫婦の年金など実収入の平均が約24万円ですので毎月3万円不足するということになります。仮に老後の生活を65歳から85歳の20年と想定すると、3万円×12か月×20年で720万円の準備が必要。老後の生活を100歳までの35年と想定すれば1260万円準備が必要ということになります。
ちなみにこの数字はあくまで平均値です。実際の年金収入や住宅の有無などによっても変わってきますし、ゆとりのある老後の生活を考えればもっと大きな金額の準備が必要になるケースもあります。ゆとりのある老後の生活費は後程解説します。
② 高齢単身無職世帯の生活費(60歳以上の単身無職世帯)
食費 |
¥35,883 |
住居関連費 |
¥12,916 |
水道光熱費 |
¥13,055 |
日用品・家具など |
¥5,681 |
洋服など |
¥3,659 |
医療関連費 |
¥8,445 |
交通費・通信費 |
¥13,117 |
教養・娯楽 |
¥16,594 |
その他雑費 |
¥15,131 |
交際費 |
¥15,258 |
税金・社会保険 |
¥12,061 |
合計 |
¥151,800 |
単身の高齢者の実際にかかる生活費の平均は約15万円ということになりました。
住居などの懸念事項はご夫婦世帯と同様です。
では年金などの実収入の平均がいくらかというと約12万円、ご夫婦の世帯同様に毎月約3万円が不足になります。老後の生活を20年と想定すれば720万円、100歳までの35年と想定すれば1260万円の準備が必要になります。
単身世帯の方が少ない金額の準備でよいのではと思っている方も多いと思いますが、支出だけでなく年金などの収入も減るため実は同じくらいの額を準備しなければいけないということになります。
(2)目標をもって準備することが大切
ここまでは、総務省の家計調査をもとに実際のかかる老後資金のデータを見てもらいました。
それは、老後の準備はやみくもにするものではなく目標をもってするべきものだからです。
目標がないままに老後資金を準備しようと思ってもどのくらい頑張ればよいのかわからず続かないですよね。どのくらい頑張ればよいのかがわからないまま、かなり先の将来を目指すのはしんどいものです。
さらには老後の準備も大事ですが今の生活も大切してほしいと思います。バラ色の老後が待っていても今の生活がじり貧になっていては元も子もないですよね。目指すべき目標がなく老後の不安を解消するためにとにかくお金を貯めなめればと頑張ることはかなりのストレスになるはずです。
2.ゆとりある老後の生活費はいくら必要か
(1)ゆとりのある老後の生活費の希望は
実際にかかっている老後の生活費の次はさらにゆとりある老後の生活をおくるにはいくら必要かを考えていきましょう。
ゆとりのある老後の生活費のデータとしてよくあげられるのが、生命保険文化センター『生活保障に関する調査』です。あくまでアンケート値にはなりますが、夫婦二人でゆとりある老後を過ごすために必要なお金は最新の令和元年のデータでは約36万円という結果が出ています。
総務省の家計調査で実際に支出されている金額との差額は月額9万円。あと9万円月々の生活費に余裕があればゆとりある老後が暮らせると思っているということです。この月額36万円の生活費を目標とするのであれば、実際の高齢者夫婦の年金などの収入の平均が毎月約24万円ですので月額12万円の不足となります。
85歳までの20年を準備するのであれば2880万円必要。100歳までの35年を準備するのであれば5040万円必要という計算になります。
(2)じぶんにとってゆとりのある老後の生活費の考え方
では皆さんはゆとりある老後の生活費である毎月36万円を目標とするべきでしょうか。
この毎月36万円という数字は、あくまで生命保険文化センターのアンケートによる希望値です。
とすれば皆さんの全てがこの36万円を前提とした準備をすべきかというとそうではないと思います。
考えるポイントは2つあります。
1つ目のポイントは、現在の生活費と総務省の家計調査で公表されている老後の生活費との大きな乖離がないかということです。
総務省の家計調査のデータは平均値になります。現役時代と老後のセカンドライフで生活費の傾向に変化がないわけではないですが、お金の使い方はそう簡単には変えられません。今現時点での生活費をベースに総務省のデータよりお金を使っている方は老後の生活費の前提を大きくして考えるべきです。逆に現時点での生活費がデータより少ない方は少し老後の生活費の前提を下げて考えてもよいでしょう。
2つ目のポイントは、日常生活以外に老後の生活、セカンドライフに何を望むかということです。
いやあ何も望まないですという方もいらっしゃいますが、仕事をリタイアした後は毎日が休日で自由に使える時間が圧倒的に増えます。老後の生活に何を望むのか改めて想定をしておくことがとても大切になります。
ちなみに、生命保険文化センターの『生活保障に関する調査』によれば、ゆとりのある老後でどこにお金を使いたいかというアンケートが公表されています。
第1位 旅行・レジャー
第2位 趣味・教養
第3位 日常生活の充実
第4位 身内とのつきあい
第5位 耐久消費材との買い替え
第6位 子供や孫への援助
第7位 隣人や友人とのつきあい
以上の結果になっています。
ちなみに、たくさんのお客様と老後の生活設計についてご相談に乗っているなかで実際に聞く声としては、旅行やレジャー、趣味や教養に実際にお金を使われている方が多いです。
ただコントロールできない支出というわけではありません。しかし意外に削れない支出項目としてあがるのが子供や孫への援助でした。子供やお孫さんが遊びに来ると子供や孫のために使いたくなってしまうというのが正直な気持ちだそうです。
皆さんも想定される基本的な老後の生活費をベースとしてプラスアルファでどこにお金を使いたいのかを考えてみましょう。これが見えてくれば改めて自分にとってのゆとりある老後の生活費がわかるはずです。
3. 老後の生活費は年金だけで足りるのか
(1)自分の年金をしろう
老後の生活費の準備のために自分がいくら年金をもらえるかも大切です。
50歳以上の方は、毎年誕生日近くに届く年金定期便に今の収入が60歳まで続いた場合にいくら年金がもらえるかが記載されていますので参考になると思います。
年金定期便のイメージ日本年金機構のホームページより引用
では、50歳未満の方、65歳まで働く方が自分の年金をしるためにはどうすればよいのでしょう。
この場合には、日本年金機構のねんきんネットで試算が可能です。登録して利用する必要はありますが、自分のもらえる年金額を知ることは、将来必要な老後の生活費を知るのと同じくらい大事なことですので是非一度試算してみましょう。
それでも、自分で計算するのは面倒くさいという方はファイナンシャルプランナーに依頼することで将来の年金額や生活費のシミュレーションを行ってくれますので活用してみましょう。
(2)準備が必要な金額の割り出し方
①自分がもらえる年金は上記のシミュレーションで分かると思います。
②そして老後の生活費は自身の現在の基本的な生活費をもとに一般的な老後の生活費の平均値から想定をする。
③ そして今はできないけれど時間ができたら使いたい老後のゆとりのある支出を想定する。
④ ここまでくれば、ゆとりある老後の生活費の月額が想定できるはずです。
⑤ ④の数字から①の数字をひけば、老後の生活に足りない月額の金額が割り出せます。
⑥ あとは何歳から何歳までの分を準備するかを決めれば準備すべき不足金額がわかります。
キャッシュフロー分析のイメージ
4.年金以外の老後の生活費の準備
(1)退職金や企業年金はもらえるのか
老後の生活費の準備として年金以外に思い当たるのは退職金や企業年金という方もいると思います。ただいくらもらえるか知っていますかという問いかけにわからないという方も多いのも真実です。
実際に会社の退職金規定や企業年金の規定はどんどん変化しており、昔のように勤続年数と退職時の想定給与をもとにおよその退職金や企業年金がわかるという会社は徐々に減ってきています。
とはいえ、退職金規定や企業年金規定のある会社では、就業規則など従業員が確認できる資料もありますし、総務部などに問い合わせれば想定の退職金や企業年金の想定額をおしえてもらえます。
老後の生活費の準備として大きな影響を及ぼします是非早期に確認をすることをお勧めします。
(2)退職金や企業年金のかわりは
昨今では退職金規定がない会社も増えてきました。また退職金規定を廃止や削減する代わりに従業員自身で確定拠出年金などを活用し退職金の代わりの準備を推奨する会社も増えています。
低金利が続き確実に高い利回りで運用できる時代ではなくなったため会社が従業員のために退職金を運用することが重荷になってきているからだと考えられます。
退職金のかわりに老後の資金の準備に適している第一の選択肢はこの確定拠出年金でしょう。企業型や個人型などいろいろなタイプがありますが税制面や運用効果などを考えると他の準備手段より優遇されているといえるでしょう。
第二の選択肢はつみたてNISAや生命保険を活用した準備でしょう。確定拠出年金ほどではないですが税制面の優遇や運用効果が期待できます。
それ以外のも不動産投資や株、投資信託、預貯金など様々な手段で老後の生活費を準備することは可能です。ただし、それぞれの準備手段には目標とする金額や到達期間によってメリットデメリットがあります。やみくもに飛びつくのではなくきちんと調べてから活用することをお勧めします。
<お役立ち情報>資産運用パーフェクトマニュアルを読んで老後の生活費を準備する
5.どこに相談すべきか?
さて、老後の生活費の準備の方法はいろいろあります。自分でどう準備していいかわからない方はどこに相談するべきでしょうか。銀行、証券会社、不動産会社、ファイナンシャルプランナー事務所etcこちらも選択肢は様々です。
ただ一つ言えることは、相談先に任せきりにしないことです。どんな業種であってもボランティアではなく営利企業です。皆さんの大事な老後のための資産を食い物にされないためには、自分自身で将来の年金額を知り、想定される老後の生活費を知り、すでに準備できているものを知ることです。
目標を知り不足している金額を自分でも把握できていれば、お勧めされている商品が自分に合っているのか基準になるはずです。逆に言えばきちんと現状を客観的に把握し目標を設定し、そこに向けてアドバイスをしてくれる相談相手があなたにとってベストな相談先といえるでしょう。
商品ありきのアドバイスやきちんと現状分析のできない相談先はあなたにとっては不要な相談相手です。
2020年7月7日
text by 久保田 正広
FPバンク