新型コロナウィルスの影響で金融・資本市場が乱高下しました。市況悪化で株価や投信の基準価額が大幅に下落していた中、「仕組債」のノックインが大量に発生していると聞きます。いったい「仕組債」とはどんな金融商品なのでしょうか?
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1.仕組債の基礎知識 債券+デリバティブ=「仕組債」
仕組債とは、一般的な債券に特別な「仕組み」を持つ債券のことを言います。
この「仕組み」とは金融派生商品(デリバティブ)と言われるオプション*¹やスワップ*²のことを指しています。つまり一般的な債券に金融派生商品を組み入れた債券が「仕組債」ということです。
そもそも債券は、国や企業などが、資金を調達するために発行する借用証書のようなものです。保有している間は、定期的に利子を受け取れて、満期(償還時)になると元本が戻ってくるのが基本的な仕組みです。
国内の低金利が長期化している中、一般的な債券と比較して「仕組み」を債券に組み込むことで、相対的に高い利回りが期待できる仕組債は一部の投資家に人気があります。その一方で、その仕組みが複雑なこともあり、商品性やリスクなどを十分に理解しておくことが大切です。今回は、発行が比較的多い仕組債である、「日経平均リンク債」を例に仕組みやリスクについて確認したいと思います。
*¹:オプションとは、ある商品を、ある期日までに、あらかじめ決められた価格で、売り付ける、または買い付ける権利のこと。
*²:スワップとは、同一通貨で固定金利と変動金利を交換する、円と外貨などの異なる通貨の元利金を交換する取引のこと。
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2.日経平均リンク債
日経平均リンク債は、日々変わる日経平均株価によって、償還金額や利率が変動するという性質を持った仕組債です。ここでは、償還金額が変動する日経平均リンク債の商品内容のポイントについて、ご説明します。
上記の図で、ケース①~④の場合の償還金額を見ていきましょう。
ケース①
早期償還です。日経平均株価が早期償還判定水準の11,000円を上回ったため、額面金額100万円で早期償還されます。
ケース➁
日経平均株価が早期償還判定日において早期判定水準の11,000円を上回らず、ノックイン価格の7,000円を下回らなかったので、額面金額100万円で満期償還されます。
ケース③
早期判定日においてノックイン価格の7,000円を下回ったものの、最終評価日に日経平均株価が12,000円と当初株価10,000円を上回ったので、額面金額100万円で満期償還されます。
ケース④
日経平均株価が早期判定日においてノックイン価格の7,000円を下回り、かつ最終評価日の日経平均株価が6,000円だったので、額面金額が60万円にて満期償還されます。※額面金額100万円×(6,000円÷10,000円)=60万円(40万円の損失)
上記の事例は、一般的な日経平均リンク債の主な特徴です。一般的な特徴だけでも複雑な仕組みの金融商品であること、ご理解いただけたと思います。
3.まとめ
仕組債は種類ごとに仕組みが違い、通常の債券と比べて商品内容が複雑であるため、なかなか理解できないまま仕組債を購入してしまったという方は少なくありません。債券と同じ感覚で購入してしまうと、経済ショックで市況が悪化した時に予想もしていなかった損失を被ることもあります。
今回の新型コロナウィルスの発生に伴って金融・資本市場は乱高下しています。リスクをしっかりと理解できていれば株式よりも安定的なリターンを生み出すことを期待できる商品ですが、経済ショックが起こった時のリスクもしっかり理解しておく必要があります。そして何よりも、余裕資金以上の投資をしないように気をつけましょう!
2020年4月11日
text by 久保田 正広
FPバンク