この記事をお読みになっているということは、あなたは、これから受け取る・すでに受け取った退職金について「投資初心者でも、失敗なく運用するにはどうしたらいいのか」と悩んでいるのではないでしょうか?
超低金利の現代では、退職金を運用する必要性は非常に強まっていると言えます。
30年前であれば、わざわざ資産運用をしなくても銀行預金の利息だけで十分増えました。しかし、いまは銀行預金をしていても、全く増えません。
ところが令和4年10月から、後期高齢者の医療費の自己負担割合が1割から2割に増えたように、年金暮らしの高齢者にも支出増の流れが押し寄せています。
そのためもし運用せず預金のままにしていたら、これから先、住宅ローンの返済やリフォーム代、医療費や生活費の足しにと使う度に少しずつ減っていく残高に不安を感じ続けることになりかねないでしょう。
だからと言って、とにかく大きく増やせそうな方法を選べばいい、という訳ではありません。
人によって資産運用に対する理解度や、運用に回せる金額、運用できる期間などは全然違うからです。
そこで本コラムでは、ファイナンシャルプランナーとして5年・金融機関に5年勤務し、幅広い年代のお客様に多様な金融商品を提案、個人としても色々な投資や運用にチャレンジしてきた私の経験を踏まえ、退職金のおすすめ運用方法を5つご紹介します。
「どんな人におすすめか」もお伝えしますので、自分はどれに当てはまるか確認してみてください。
後半では、退職金の運用で失敗しないための方法も解説します。
本コラムを読んでもらえれば、運用初心者であったとしても、自分がどの運用方法をやった方が良いのかを掴んでもらえます。あわせて、失敗を防ぐポイントも把握できますので、しっかり準備して万全の状態で退職金の運用を始めましょう!
本コラムでわかること
- 退職金のおすすめ運用方法5選
- 退職金の運用で失敗を防ぐための5つのポイント
1. 退職金のおすすめ運用方法5選
本章では、筆者が考えるおすすめの退職金の運用方法を5つ紹介していきます。
一般的に退職金の運用というと、元本が保証されていないものがほとんどという前提があります。また、退職金の額も運用経験の有無も人によって異なります。
そのため、どんな運用方法も万人におすすめできるものはありません。どんな運用方法にも必ず一長一短あり、普遍的に完璧な運用方法はないからです。
そんな前提を踏まえた上で、筆者が考える退職金の運用方法5選と、それぞれのおすすめできる人とそうでない人を下記の通りまとめました。
それぞれの特徴について解説していきます。
退職金の運用方法5選 | |
運用方法 | おすすめな人 |
投資信託 |
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ファンドラップ |
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生命保険 |
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退職金専用定期預金 |
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不動産小口化商品 |
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1-1.「投資信託」は運用初心者におすすめ
退職金の運用方法でまずおすすめしたいのは、投資信託です。
投資信託は運用をプロにおまかせできるため、運用が初めてという初心者の方に、特におすすめしたい運用方法です。
投資信託とはどういう金融商品なのか、(一社)投資信託協会では、次のように説明されています。
そもそも投資信託とは?
「投資信託(ファンド)」とは、一言でいえば「投資家から集めたお金をひとつの大きな資金としてまとめ、運用の専門家が株式や債券などに投資・運用する商品で、その運用成果が投資家それぞれの投資額に応じて分配される仕組みの金融商品」です。
上記の図にもあるように、投資信託は株式や債券といった金融資産に広く分散投資するのが特徴で、おすすめの理由でもあります。
分散投資がおすすめである理由は詳しくは2章で解説していきますが、分散投資することで例えば一社の企業の株式にだけに投資する場合と比べて、リスクも分散させることができるのです。
このように、運用をプロにおまかせでき分散投資できることが、投資信託で退職金を運用するおすすめの理由といえます。
ただし、投資信託の場合、投資先の選定や資産配分といった管理は自分でやらなければなりません。そういったことは苦手、自信がないという人には、退職金の運用方法として必ずしも投資信託をおすすめしません。
むしろ、「投資先の選定や資産配分、管理までもプロにお任せしたい」という方は、次節でご紹介する「ファンドラップ」の方がおすすめです。
1-2.「ファンドラップ」は運用の管理をおまかせしたい人におすすめ
「運用は初めてだからプロにお任せしたい」「忙しくて運用のことを考える時間が取れない」という方なら、ファンドラップがおすすめです。
ファンドラップとは、一言でいうと、資産運用を専門家(=運用会社)に一任するサービスです。
- 投資先をどこにするか
- どのくらいの割合で保有するか
- 状況に応じた割合の調整をいつのタイミングで行うか
- 運用状況の確認・分析
- いつ解約すべきか
など、初心者がひとりで行うには難しいであろうことを全て運用会社にお任せできます。
なおファンドラップでは仕組み上、運用する商品を「投資信託」に限定しています。
そのため、自分で投資信託を購入するケースと、よく比較されます。
実際にファンドラップを購入することと投資信託を購入することの違いを比べてみると、以下の表のようになります。
ファンドラップと投資信託の違い | ||
ファンドラップ | 投資信託 | |
どの投資信託を持つか | 顧客意向に沿って運用会社が決定 | 投資家が自分で決定 |
投資信託それぞれを どんな割合で持つか |
顧客意向に沿って運用会社が決定 | 投資家が自分で決定 |
運用状況に応じた リバランス等の管理全般 |
顧客意向に沿って運用会社が実施 | 投資家が自分で実施 |
運用状況の確認 | 定期的に担当アドバイザーが報告 | 好きな時に自分で確認 |
いつ解約するか | 担当アドバイザーと相談して決定 | 自分で決定 |
どんなコストがかかるか | ファンドラップ手数料 投資一任報酬 信託報酬 |
販売手数料(※1) |
※1・2がかからない投資信託もあります。
このようにファンドラップでは、ほとんど自分の手間をかけることなく運用できるのです。
とは言え、一から十まで全部をお任せできる訳ではなく、「自分がどのような運用をしていきたいのか」は、運用を始めた時に伝えなくてはいけません。
ですがこれに関しても、ヒアリングシートという、お客様の運用に対する考えや方針を確認するための質問票に回答するだけでOKです。
さらに特筆すべきは、担当アドバイザーの存在です。
資産運用で成功するコツは、長く保有し続けることです。
ですが自分が選んだ商品がプラス・マイナスを行き来すると、「本当にこれで良かったのか?こんなに値動きして大丈夫なのか?持ち続けて良いのか?」と不安になり、保有し続けるのが難しくなってしまうことがあります。
あなたが不安な時に、すぐそばで状況を説明してくれる・どうすべきかをアドバイスしてくれる人の存在は、非常に心強いものとなってくれるのです。
一方このような手厚いサービスがある反面、自分で投資信託を買うケースに比べてコストが高くなる傾向があります。
また、運用会社の技量(=そのファンドラップの運用実績)、アドバイザーとの相性なども、成果を左右する要因として挙げられるでしょう。
ファンドラップを検討する上では、これらも確認した上で決めることが重要です。
運用に関わる判断を自分でできる上級者の方は、あまり魅力を感じないサービスかもしれません。
しかし、「運用が初めて自信がない」「運用のことをゆっくり考える時間が取れない」という人にとっては、特におすすめと言えます。
1-3.「生命保険」は運用しながら資産を残したい家族がいる人におすすめ
配偶者やお子様、お孫様など、自分に「もしものこと」があったとき、資産として残してあげたい人がいる場合は、生命保険を活用した運用もおすすめです。
ここでいう生命保険とは、保険料を一括で納入する貯蓄型の生命保険です。(「一時払い生命保険」と言います)
いくつか種類がありますが、その中でも、退職金の運用先として生命保険を検討する場合は「変額保険」が代表的です。
変額保険とは、資産を株式や債券を中心に運用し、運用の実績によって満期保険金や解約返戻金が増減する保険のことです。
契約途中で解約した際にもらえる解約返戻金・満期まで持ち続けた際にもらえる満期保険は、運用実績によって、支払った保険料よりも増えたり減ったりします。
ただし、もしものことがあった時の保険金は最低保証されています。さらに運用成績が良いと「変動保険金」が上乗せされます。
「生命保険の機能が付いた投資信託」と言えるかもしれません。
運用実績が良かった時 |
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運用実績が悪かった時 |
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参考:生命保険文化センター 生命保険に関するQ&A、生命保険文化センター 主契約の種類
また、「もしものこと」というのは、運用期間中に死亡してしまった場合をいいます。
もしものことがあったとき、生命保険で運用していると次の3つの効果が期待できます。
一般に運用というと、「リスクをコントロールしながら増やす」というイメージがあると思います。
しかし、それだけでなく、特にファミリー世帯の方は生命保険を上手く活用するというのも、おすすめの運用方法といえるでしょう。
1-4.「退職金専用定期預金」は比較的安全に運用したい人におすすめ
元本保証を重視したい場合など、比較的安全な運用をしたい人には「退職金専用定期預金」もおすすめです。
退職金専用定期預金とは、その名の通り退職金を受け取った人専用の定期預金で、主に銀行などの金融機関で取り扱っています。定期預金なので原則として元本は保証され、通常の定期預金と比べて、退職金専用定期預金は相対的に金利が高いことが一般的です。
ただし、金融機関によっては定期預金だけでなく「定期預金と投資信託」や「定期預金とファンドラップ」といった組み合わせで取り扱っている金融機関もあります。
「定期預金」だけか、「定期預金と投資信託」の組み合わせか、はたまた「定期預金とファンドラップ」の組み合わせか・・・どのような取り扱い条件かは金融機関によりますが、運用する退職金の一部、または全部を定期預金で運用することになるため、「投資信託」や「ファンドラップ」だけで運用する場合と比べると、運用で得られるリターンは相対的に見劣りするかもしれません。
反面、定期預金は元本保証であるため、相対的に安全性の高い運用方法であるともいえます。
従って、「比較的リスクを取った運用ができる人、したい人」にとっては、退職金専用定期預金、特に定期預金だけの運用方法は、必ずしもおすすめとはいえません。一方で、元本保証で、比較的安全な運用をしたいという人にとっては、退職金専用定期預金はおすすめといえるでしょう。
1-5.「不動産小口化商品」は安定収入を望む人におすすめ
退職金の運用で安定した収益を得たい場合は、「不動産小口化商品」もおすすめです。
不動産小口化商品とは、その名の通り不動産に投資する運用商品で、小口化することで比較的少額から始めることができる運用商品です。
一般的に言われる不動産投資との共通点でいうと、不動産を現物で所有するという点は同じです。不動産を所有して賃料収入を得ることができるため、比較的安定した収入を得ることができます。
一方で、違いは、一般的に不動産投資は数千万円~数億円が必要な運用で、主にマンションのワンルームや一棟に投資します。対して、不動産小口化商品の場合は数万円~数十万円から始めることができ、ビルや商業施設に投資するのが一般的です。また、不動産投資は金額が大きいことから金融機関の融資(借入)を利用することが一般的ですが、不動産小口化商品の場合は、融資は利用しない(できない)ことが一般的です。
さらに、前述した投資信託やファンドラップとの違いでいうと、投資信託やファンドラップは運用次第で毎年のリターンの結果が変わります。対して、不動産小口化商品のリターンは賃料であるため、毎月一定した収入が見込めるといった違いがあります。
不動産小口化商品は安定収入が見込めることから、退職後に収入が下がる人や、老後を迎え収入が年金のみになるという状況の人にとってもおすすめといえるでしょう。このような状況の人でも、収入の足しになるものが安定して見込めると安心ですよね。
2. 退職金を運用する際に失敗を防ぐポイント6つ
前章では、おすすめの退職金の運用方法5選を紹介しました。前章を参考に「早速、退職金の運用を検討しよう!」という人もいることでしょう。
しかし、ちょっと待ってください!
確かに、運用して増えたら嬉しいけれど、もし元本が減ってしまったら・・・運用で失敗したらどうしましょう。
もちろん、前章では投資信託など元本が保証されていない商品もおすすめとして紹介しましたし、運用にリスクが伴うことは、ある程度は理解されていることと思います。
そうはいっても、やはり大切な退職金です・・・ある程度のリスクは覚悟しつつも、たとえ元本割れしたとしても、そういった失敗は最小限にしたいものではないでしょうか。
そこで、本章では退職金を運用する際に、極力失敗を防ぐためのポイントを6つ紹介していきます。
退職金を運用する際に失敗を防ぐポイント6つ
- そもそも「退職金を運用すべきか?」を考えておく
- 金融機関の勧めるままに契約しない
- 運用の期間は長期を基本に考える
- 分散投資を基本に考える
- 全資産で運用の方針を立てる
- 「良い専門家」に相談する
運用が初めてという人にとっては特に、上記の5つのポイントを踏まえてから運用を始めた方が、より失敗しにくい運用をすることができるでしょう。
それぞれの理由や詳細について、本章で解説していきます。
2-1. そもそも「退職金を運用すべきか?」を考えておく
退職金の運用で失敗を防ぐ1つめのポイントは、そもそもとして「自分の退職金は本当に運用すべきなのか」を考えておくことです。
大前提として、運用に回す資金は余剰資金である必要があります。
たとえば今、退職金を運用に回したとしても、次のような心配はないでしょうか。
退職金を運用に回しても…
- 不測の事態や急な出費に対応できるだけの預貯金はあるか
- リフォームやマイカーの購入等、数年以内に大きな出費を予定していないか
- 子どもの学費は充分に確保されているか
せっかく良い金融商品で退職金を運用できても、突然何か大きな支払いが必要になったときに相応の預貯金が確保されていないと、すぐに解約することになってしまいます。
また、退職後に収支が赤字になる場合も要注意です。
年金だけで生活費を賄えないなど、収入より支出が多い場合は、預貯金を取り崩す他ありません。そうなったときに、せっかく運用させた退職金も結局取り崩す必要に迫られることも考えられるでしょう。
つまり生活費や住宅ローン返済など、他に使う予定があるなら運用に回してはいけないのです。
あなたの現状はいかがでしょうか。近い将来、大きな出費は予定していませんか?退職後に収支は赤字にならなそうでしょうか?
運用を検討する前に、「まずそもそも運用すべき現状なのか」「その退職金は余剰資金なのか」まずはここから検討していきましょう。
2-2. 金融機関の勧めるままに契約しない
退職金の運用で失敗を防ぐための2つ目のポイントは「金融機関の勧めるままに契約しない」ということです。
確かに、1章ではおすすめの運用方法を紹介してきましたし、これらは金融機関の窓口で契約できますが、それが必ずしもあなたに合った運用方法であるとは限らないからです。
なぜそう言えるかというと、その理由は、金融機関のビジネスモデルにあります。
金融機関は販売する金融商品が決まっているため、自社の金融商品を優先的に販売せざるを得ないという立場にあり、一定のノルマもあります。その金融商品がたまたま、あなたに合った商品であれば何も問題はないでしょう。
しかし、たとえば投資信託一つとってもたくさんの種類があるため、金融機関の勧めるまま契約してしまうと、あなたの状況に合わない商品を選んでしまう可能性もあります。年齢や家族構成、収入や支出、そして、資産状況が人それぞれ異なるように、その人に合った運用方法もまた、それぞれの状況によって異なるのです。
一方で、そういった点において、たとえば独立系のFPであれば、あなたに合った運用方法のアドバイスを受けられるかもしれません。独立系のFPとは、金融機関に所属していないFPのことで、金融機関から独立している(資本関係がない)ことから独立系FPと呼ばれます。そのため、しがらみもなく、顧客本位の理想的なアドバイスが可能になります。
独立系FPについては、こちらのコラムも参考になさってみてください。
よく内容を理解しないままに、「なんとなく良さそう」とか「金融機関の担当者がおすすめと言っていたから」といった理由で金融機関の勧めるままに契約してしまうと、後々ミスマッチが起こることもあるでしょう。
このような失敗を防ぐためにも、金融機関の勧めるままに契約しないようにしましょう。
2-3. 運用の期間は長期で考える
3つ目のポイントは「運用の期間はなるべく長期で考える」です。
長期とは、具体的には15年以上、最低でも10年程度を指します。
なぜ、運用期間を長期で考えるべきなのでしょうか。
理由は、こちらの画像をご覧ください。
出典:ウォール街のランダム・ウォーカーより
こちらは、1950年~2013年における、S&P500(※)の各年の年平均リターンの最高と最低、平均を表したグラフです。このグラフによると、15年以上運用した場合、マイナスになる期間が一度もないことを表しています。(※)アメリカの代表的な株価指数です。
何故こうなるかというと、リターンの集計期間が短いほど、その期間のリターンは、その期間内で起きた経済イベントに大きく影響するからです。たまたま好景気のタイミングで運用を始めた場合は大きくリターンも見込めるでしょうし、反対に、たまたま不況入りする直前や金融ショックなどと重なった年に運用を始めた場合は大きく下振れることもあるでしょう。
一方で、集計の期間を長く取るほど、1回の経済イベントがリターンに与える影響は良くも悪くも軽微になっていきます。加えて、これまで人口の増加やイノベーションによって、基本的に世界経済は上がり下がりを繰り返しながらも成長してきたという背景もあります。
以上の結果から、最低でも10年、理想は15年以上の期間で運用することで、比較的失敗しにくい運用ができるといえます。
退職金の運用で失敗を防ぐためには、長期で運用していくことを基本に考えていきましょう。
2-4. 分散投資を基本に考える
退職金の運用で失敗を防ぐためのポイント4つ目は、分散投資を基本に考える、ということです。
投資の世界には「卵を一つのかごに盛るな」という格言があります。卵を一つを資産と置き換えて考えてみましょう。一つのかごに全ての卵(資産)を入れていると、もしもかごを落としてしまったとき、全て割れてしまいます。しかし、卵を複数のかごに分散しておければ、万が一1つかごを落としてしまっても、他の卵は割れずに済みます。
出典:GPIF 年金積立金管理運用独立行政法人 HP 分散投資の意義③卵を一つのかごに盛るな より
退職金の運用にも全く同じことがいえます。一つのかご(運用商品)に集中して投資するのではなく、複数のかごに分散させることで、運用のリスクを分散させることができます。
失敗しない運用をするためには、分散投資を基本に運用を考えましょう。
2-5. 全ての金融資産で運用の方針を立てる
退職金の運用で失敗を防ぐための5つポイントの最後の1つは「全ての金融資産で運用の方針を立てる」ということです。
何故それが重要なのかというと、全ての金融資産のうち退職金の占める割合次第で、取れるリスクが変わるからです。
ここでいうリスクとは、運用における不確実性(振れ幅)のことをいいます。
たとえば、同じ退職金1,000万円を受け取ったAさんとBさん。退職金は同じでも、二人の資産状況は異なります。
同じ退職金1,000万円でも・・・ | |
Aさん | Bさん |
退職金1,000万円 預貯金3,000万円 |
退職金1,000万円 預貯金300万円 |
この二人の運用方法は同じでいいのでしょうか?
たとえば、退職金1,000万円の全額を投資信託で運用しようとしたときに、Aさん資産状況は預貯金を含めた全資産のうち約25%が投資信託になる一方、Bさんのそれは約77%と預貯金よりも多い状況です。
仮にこの状況で投資信託に10%(100万円)の損失が生じたとき、Aさんにとっての100万円の損失は全資産の-2.5%であるのに対し、Bさんのそれは-7.7%と、実に3倍以上のダメージ差になります。
この状況で、もしあなたがBさんの立場だったとき、退職金1,000万円を全額投資信託に投資する勇気はありますか?
もちろん、投資信託の運用次第では上手くいくかもしれません。
しかし、資産全体で考えたときに、もしあなたがBさんの状況で退職金の全額を投資信託で運用するというのは、やはりリスクが高いと判断するのが妥当でしょう。一言に同じ1,000万円の運用といっても、他の資産状況と合わせて考えると、取れるリスクは資産状況によって変わります。
従って、退職金だけで運用で考えるのではなく、退職金も含めた全資産で運用を考えることで、より失敗を防ぐことができるでしょう。
ただ、全資産で運用を考えると言っても、特に初めて運用するという人にとっては、そのハードルは高いかもしれません。全資産の中で、どんな運用商品をどんな割合で保有するべきなのか、自信を持って判断するのは難しいかもしれません。
そういった人は、「良い専門家」に相談するのも良いかもしれません。次章で詳しく解説していきます。
2-6.「良い専門家」に相談する
ここまでのお話を参考に、自分で退職金を運用してみよう!と行動に移せる人もいるでしょう。
しかし、それでもやっぱり一人で退職金を運用する自信がない、心配という人は「良い専門家」に相談しましょう。
特に、資産運用の経験がない、初めてという人にとっては、退職金の運用を検討する上で「良い専門家」に相談することが最も重要になるでしょう。
良い専門家とは、資産運用に精通したファイナンシャルプランナーなどが該当しますが、その中でも筆者が考える「良い専門家」の条件は次の通りです。
退職金の運用を相談する「良い専門家」の条件
- ライフプランに合った提案をしてくれる
- 提案の引き出しが豊富
- 安心できる、信頼できる、長く付き合える
無論、金融や投資といった運用に精通している専門家であるということは大前提です。その上で、上記のような条件を満たしていることが「良い専門家」の条件と筆者は考え、その理由について本章で解説していきます。
なお、運用の相談ができる専門家の例や、その選び方についてはこちらのコラムも参考にされてみてください。
ライフプランに合った提案をしてくれる
退職金の運用を相談する良い専門家として、ライフプランに合った提案をしてくれる専門家が、良い専門家の一つ目の条件であると筆者は考えます。
そのような専門家に相談することで、退職金の運用をそれ単独で考えるのではなく、あなたのライフプランと一緒に考えることで、よりあなたに合った運用方法を選ぶことができるでしょう。
ライフプランとは、あなたの人生のビジョン(夢や希望)を叶えるための、お金に裏打ちされた人生設計です。
たとえば、退職金の運用を考える人の中には、50代~60代という人も多いと思います。50代~60代の人というと、子どもが高校生や大学生になって最も学費がかかる時期に差し掛かる人もいるでしょうし、お孫さんがいるという人も珍しくないでしょう。あるいは、親の介護や、自身の退職後のセカンドライフを考え始める人もいることでしょう。
もし、あなたがこのような状況にある中で退職金を運用するとしたら・・・あなたにはどんな運用が合っているのでしょうか。運用する金額はいくらにしましょうか。運用する期間はどのくらいにしましょうか。
このようなことを判断していくためにも、いきなり運用を始める前に、まずはライフプランを立てることから始めていくべきと筆者は考えます。そうすることで、より安心して、納得して運用先を選定することができるようになるでしょう。
そして、あなたと一緒にライフプランを立て、その上で、あなたのライフプランに合った退職金の運用方法を提案してくれる専門家こそが、良い専門家の第一条件であると筆者は考えます。
以上の理由から、専門家に退職金の相談をしたい場合は、ライフプランに合った提案をしてくれる専門家を選ぶと良いでしょう。
提案の引き出しが豊富
より、あなたに合った運用方法を選ぶためにも、あらゆる選択肢の中から比較検討しながら相談できる、提案の引き出しが豊富な専門家が、良い専門家といえる条件の2つ目です。
提案の引き出しが豊富ということは、その分あなたの退職金の運用の選択肢が広がるということです。選択肢が広がること、より納得して、あなたに合った運用方法を選択することができるでしょう。
「Aという商品がおすすめです。」というだけの専門家と、「A、B、Cという商品があり、それぞれのメリットとデメリットは〇〇で、△△という理由でAがおすすめです。」という専門家・・・どちらの専門家がより納得して運用の相談ができるかというと、多くの人が後者の専門家を選ぶのではないかと思います。
比較をしないと、その運用商品の相対的な良さも分からないため、あらゆる角度から、あらゆる選択肢を提示してくれる専門家に相談するようにしましょう。
安心できる、信頼できる、長く付き合える
最後は感情論ですが、安心できる、信頼できる、それによって、長く付き合える専門家が、良い専門家の条件の3つ目であると筆者は考えます。
あなたの大切な退職金です。その運用先を専門家に相談するのに、信頼できるというのは、最低限必要な要素でしょう。
また、運用は長期戦です。転勤などで担当者が頻繁に変わるのではなく、信頼できる専門家が担当し続けてくれることが安心につながるでしょう。
安心できる、信頼できる、これらの明確な基準はありません。あなたが「これからも相談したい」と思える専門家が、あなたにとって安心、信頼できる専門家であり、長く付き合っていける専門家といえるでしょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
あなたに合った退職金の運用方法は見つかりそうでしょうか。
まずは、1章の退職金の運用方法5選を参考に、各運用の方法を比較してみるのは良いかもしれません。
ただし、それだけでなく、2章を参考に退職金の運用で失敗を防ぐ5つのポイントについても確認しておきましょう。
そして、退職金の運用で最も重要な「良い専門家」に相談する重要性について3章で述べてきましたが、運用が初めてという人は特に参考にしていただけると良いと思います。
本コラムをご覧いただいたあなたにとって、ベストな退職金の運用方法が見つかり、楽しく運用を始められることが、筆者として一番の喜びです。
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