奨学金は借金である!そんなこと百も承知という声が聞こえてきそうですが、奨学金を借りるのは子供本人。大学入学時に果たしてその意味を理解しているでしょうか?最近奨学金の問題が大きく取り沙汰されています。ライフプランの観点から考えてみましょう。
1.サラ金よりも怖い奨学金
1度でも奨学金の滞納があると、本人に電話での督促が始まり、3ヶ月以上の滞納になると、奨学生の個人情報がブラックリストに送られます。3~8ヶ月間の間は委託先の民間業者から督促を受け、滞納が9ヶ月を過ぎると「支払督促」が送付され、それでも滞納を続けると、本人の給与差し押さえ(約25%程度)や提訴が始まります。奨学金の返済が出来ない状況になって、弁護士に相談すると自己破産を薦められます。しかし、自己破産しても借金がなくなるわけではなく、奨学金の申込みの時に記入した連帯保証人が取り立てられます。
昨今住宅ローンでも連帯保証人をとらないのに、奨学金借入には2人の連帯保証人を立てる必要があります。両親だけでなく伯父、伯母、祖父母、お世話になっている人に借金の取り立てが行くわけです。
このような仕組みから、返済できない負債を抱えたまま、自己破産できない状況になる可能性もあります。サラ金からの借り入れが膨らみ、自己破産する人の話も聞きますが、ペナルティはあるものの、一度精算し人生をやり直すチャンスはありますが、連帯保証人が二人もいたら、自己破産なんてできない!です。サラ金より怖い!とはこう言うことです。
ここでは、甘く見てはいけない学費の話の原因や背景について考えてみたいと思います。
<出典>独立行政法人 日本学生支援機構
奨学金を延滞した場合
https://www.jasso.go.jp/shogakukin/entai/index.html 閲覧日2019.5.15
2.未来の家計簿つけてますか?
(1)ライフプランの落とし穴
わが子が大学進学を目前とした時、奨学金の話を「あなたが借金する話」と伝える覚悟はありますか?サラ金より怖いなんて、そんなわけないと言いたいところですが、「厳しいなぁ」と言わざるを得ないことがあります。ただ、知らなかったでは済まされない事実があるのです。ここでは奨学金の善し悪しを語るのではなく、ライフプランにおける学費の考え方、準備について最近話題にあがることの多い『奨学金』をキーワードにお話ししていきたいと思います。
ライフプラン二ング時には、人生における二つの谷のお話をしています。この谷は、深さはそれぞれ異なるものの、お子様がいるご家庭であれば必ず訪れます。一つは教育資金の谷、そしてもう一つは老後です。長い人生、お金の収支は毎年同じではありません。特にお子様の教育資金に待ったは効きません。子供が独立し定年を迎えるまでは落ち着きますが、60歳退職の場合、年金受給開始までの期間はまた貯蓄を崩すことになります。
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(2)教育資金に待ったはない
子供の未来を案じ、教育にお金をかけてあげようと考えるのは親の心理です。が、子供の教育費は予想外にかかります。特に首都圏で子育てをする場合、幼稚園、小学校という幼児期から習い事や通塾環境は溢れていますから何もさせてないご家庭の方が少なく幼少期から教育費がかかる傾向があります。
中学進学にあたっては、公立であったとしても、部活や塾代、携帯代、女の子であれば被服代もかかるし、もちろん家族で旅行も行きたいですね。住宅ローンを支払いながら、親として当然当たり前のことをしてきて、子供が高校2年生くらいになると大学受験が目前にやってきます。お子様が私立文系に進学を希望した場合、初年度大学に払い込む金額は120万円位でしょう。
しかしながら受験料だけでも数校、学部ごとの受験なので20万円~30万円。私立理系の場合、文系より授業料が年間30万円~50万円程度高額になるケースが多く、また最近の傾向として理系は大学入学時から大学院まで進むことが視野に入れたカリキュラム。
4年+2年、授業料だけで600万円です。大学や高等教育に進むのが当たり前のご時世、『奨学金がある』と助かるのは事実です。
(3)奨学金の返済義務は子供本人ですが・・
『奨学金』は借入です。高校卒業間近の17歳の子供に返済義務が生じます。その返済の重さが理解できているでしょうか?奨学金で例えば月50,000円、年間60万円で4年間借りた場合、240万円です。利息のあるなしで違いはありますが、概ね12,000~15,000円を15年に渡って返済するものとなります。子供の未来を明るくするための大学進学、奨学金ですが、返済まで含めての理解と計画性がなければ苦しく重いものとなってしまいます。未来の家計簿、ライフプランニングで人生の大きな谷を見据えていれば、知っていれば、回避できることも多いのです。
3.まとめ
ライフプランニングをすることで、全ての問題を解決する事はできませんが、未来にどんなイベントがあり、どう暮らしていきたいのか、それを実現するために『守る・貯める・増やす』といったお金のポートフォリオ(未来の家計簿)を作成することで、安心した人生を送る事ができます。まずは奨学金ではなく、自分の家計と子供の将来を考えて上手に奨学金を利用したいですね。
2019年8月8日
text by 久保田 正広
FPバンク