これから証券口座やNISA口座を開設しようと思っている、あるいは、口座開設はしたけれどその後の投資信託の選び方が分からず放置している・・・そんな方はいませんか?
2023年4月に金融庁が公開した「資産運用業高度化プログレスレポート」によると、国内には投資信託が14,000本超あるとのこと。
それだけの本数の中から、投資を始めたばかりの初心者が、パフォーマンスが優良、かつ長く安心して持ち続けられる投資信託を選ぶのは非常に難しいと思います。
そんなあなたへ向けて、本コラムでは、まず投資信託の選び方のポイントを7つに分けて解説していきます。独立系FPとしてお客様に資産運用の提案を行う中で実際にお伝えしているものなので、実用性はご安心ください。
また記事後半では「オススメしない”投資信託の選び方”」についてもお伝えします。せっかく始めたのに大損してしまって即退場とならないように、ぜひこちらも確認しておいてほしいと思います。
本コラムで分かること
- どんな投資信託を選ぶべきかのポイント
- やってはいけない投資信託の選び方
本コラムをしっかりと読み込み、投資信託選びを成功させてください。
なお「そもそもどうやって投資信託を始めたらいいか分からない…」という方は、失敗しない投資信託の始め方についても解説した記事がありますので、ぜひそちらもご覧ください。
<関連記事>
【初心者向け】失敗しない投資信託の始め方!
目次
1. 投資信託の選び方の7つのポイント
本章では、筆者が考える投資信託の選び方のポイントについて解説してきます。
筆者が考える投資信託の選び方のポイントは、次の7つあると考えています。
これら全てを満たせる投資信託を選べば、
これらがなぜポイントと言えるか、それぞれ詳しく解説していきます。
1-1. NISA対象であること
投資信託を選ぶ上で最初に確認したいことは、その投資信託がNISA(つみたてNISA含む)の対象であるかどうかです。
通常、投資信託などで運用して得た利益は利益に対して約20%の税金がかかりますが、NISA口座では非課税になります。本来払うはずの税金が、払う必要がなくなるのです。
さらにNISAの中でも「つみたてNISA」では、そもそも購入できる投資信託を金融庁が指定しています。
例えば、2023年9月現在のつみたてNISAの対象商品は248本です。
つまり「つみたてNISAの対象になっている投資信託」という条件をつけるだけで、国内で運用されている投資信託約6,000本から、245本(指定インデックス投資信託209本+アクティブ運用投資信託等31本+上場株式投資信託8本)まで絞り込みできます。
なお、2024年1月からは新NISAが始まりますが、新NISAで購入できる投資信託も金融庁が指定することになっています。まだ最終決定まで行われていませんが、2023年9月現在における新NISA(成長投資枠)の取り扱い商品は、以下のリンクから確認できます。
引用:(一社)投資信託協会 NISA成長投資枠の対象商品
運用益が非課税になり、数ある投資信託の中から国が厳選した投資信託に絞り込めるNISA対象の投資信託・・・投資信託を選ぶ過程においてNISAを活用しない手はないでしょう。
なお、本コラムではNISAの説明は割愛しますが、NISAやつみたてNISA、さらには2024年から始まる新NISAについては、こちらのコラムをご参照ください。
1-2. 購入時や解約時の手数料が無料
投資信託を購入するときや解約するときに手数料がかかるものもありますが、これらの手数料がかからない投資信託を選ぶことも、投資信託の選び方では基本的なポイントです。
主な手数料としては、次の2つが挙げられます。
- 投資信託の購入時にかかる手数料…買付手数料
- 投資信託の解約時にかかる手数料…解約手数料、信託財産留保額
これらの手数料は投資信託で運用する際のコストになるため、当然、抑えたいところです。
ただ、基本的にNISA対象の投資信託であれば、そのほとんどが購入時や解約時に手数料のかからない投資信託です。
手数料がかからないという点でも、NISA対象の投資信託の中から優先的に選ぶのが良いでしょう。
1-3. 信託報酬が相対的に安い
信託報酬も投資信託を運用中にかかるコストであるため、相対的に安い投資信託を選ぶと良いでしょう。
信託報酬とは、投資信託を保有している間に投資信託の管理や運用のためにかかる費用です。ただ、別途で支払うわけではなく、「年何%」のような形で信託財産から毎日自動的に差し引かれます。
信託報酬は投資信託によりますが、筆者の主観では、信託報酬が1%未満の投資信託は比較的安めな信託報酬であると思います。
ただし、信託報酬が1%を超える投資信託は選ぶべきではないかというと、必ずしもそうとは言い切れないです。信託報酬が1%以上であったとしても、それ相応の運用成果を挙げている投資信託もあるため、信託報酬が1%以上=選ぶべきではない投資信託とは一概に言えないのです。
とはいえ、信託報酬は安いに越したことはありません。信託報酬の明確な目安はありませんが、なるべく信託報酬が安い投資信託を選ぶと良いでしょう。
1-4. 純資産総額が最低30億円以上
純資産総額は最低30億円以上であるというのも、投資信託の選び方における一つの目安になるでしょう。
何故かというと、純資産総額が最低30億円以上あれば、一般的に繰上償還のリスクが少ないといえるからです。
純資産総額とは、その投資信託の規模を表すバロメーターで、どれだけの資金が集まって運用されているかを示しています。資金が集まっているということは、単純にそれだけ投資家に投資先として選ばれているということになるため、まず安心感はあると思います。
繰上償還とは、簡単にいうと、その投資信託の早期解散です。繰上償還されると運用も終了するため、本来の投資計画が崩れてしまうことが考えられます。
純資産総額が豊富な投資信託を選べば、それ自体が繰上償還のリスクを抑えることに繋がります。
なお投信信託が繰上償還される理由は様々ありますが、最も多い理由は「投資信託の規模の縮小」です。
つまり、純資産総額が既定の額を下回ってしまうのです。
この既定の額というのは投資信託によりますが、一般的には30億円が目安と言われています。30億円を下回らなければ、繰上償還されることはまずないと考えてよいでしょう。
参考:投資資料館
投資信託が思わぬタイミングで繰上償還され、本来の投資計画が崩れないように、純資産総額が30億円以上ある投資信託を選ぶと良いでしょう。
1-5. トータルリターンがプラス
投資信託の選び方において、トータルリターンがプラスであることも、重要なポイントです。
トータルリターンとは、一定の期間中に投資した元本に対する総合的な損益(どれだけ増えたか、あるいは減ったか)のことです。
トータルリターンがプラスということは、投資した元本に対して運用による利益が出ている状態ということですので、それだけ運用の成績が良い投資信託といえるのです。
もちろん、これまでのトータルリターンがプラスだからといって、これからのトータルリターンもプラスになるという保証はないという前提はあります。
それはそうとも、少なくとも過去の運用実績はプラスであったという事実は、投資先の選定において一つの判断材料にはなり得るでしょう。
1-6. シャープレシオが相対的に高い
投資対象が同じような投資信託同士であれば、シャープレシオが相対的に高い投資信託を選ぶことも、投資信託の選び方における重要なポイントです。
シャープレシオとは、投資信託の投資効率のよしあしを評価した指標で、数値が高いほどリスクに対してリターンが大きいことを示しています。従って、投資対象が同じような投資信託同士であれば、相対的にシャープレシオが高い方を選ぶと良いといえるのです。
たとえば、国内株式を投資対象とした投資信託が複数ある場合、その中でよりシャープレシオの高い投資信託が、より投資効率の良い投資信託といえます。
一般的にシャープレシオは1を超えていると優良な投資信託といわれますが、あくまでも目安です。
シャープレシオが1未満であっても優良な投資信託はたくさんありますし、結局はその他のデータも含めた総合判断で投資信託を選ぶべきではあります。
とはいえ、やはりシャープレシオは基本的には高いに越したことはないので、投資信託の選び方における一つの目安として参考にされると良いと思います。
1-7. 国際分散投資されている
投資先が国際分散投資されている投資信託を選ぶことも、投資信託の選び方としておすすめしたいポイントです。
分散投資の重要性を訴える言葉の一つに、投資の世界には「卵は一つのかごに盛るな」という格言があります。
資産を卵に置き換えた例えなのですが、卵を一つのかごではなく複数のかごに分散させて盛ることで、リスクを分散させるという考え方です。
出典:年金積立金管理運用独立行政法人 分散投資の意義③卵を一つのかごに盛るな
どの投資先が当たるかはずれるか、未来予測は誰にもできません。だからこそ、世界のあらゆる国々に広く分散投資することで、リスクを分散させることが重要といえるのです。
以上の理由から、国際分散投資されている投資信託を選ぶことが重要であるといえます。
2. こんな投資信託の選び方はやってはいけません
前章では、投資信託の選び方のポイントと各理由について解説してまいりましたが、では反対に「こういう投資信託の選び方はすべきではない」といえるものもあります。
筆者が考える「やってはいけない投資信託の選び方」を、以下に挙げます。
この選び方をしてしまうと、大きな損失を出してしまい、早々に資産運用を引退せざるを得ない事態になりかねない恐れがあります。
なぜこの選び方がダメなのか、それぞれの理由について解説していきます。
2-1. ランキングだけで投資信託を選ぶ
ランキングだけを参考にして投資信託を選んでしまうと、自分の本来の目的・計画と全くかけ離れた投資信託を選んでしまう可能性があるため、筆者はおすすめしません。
もしも、あなたがランキングだけで投資信託を選ぼうとしているのであれば、その投資信託の投資先や運用方針を理解していますか?その上で、その投資信託があなたにとって最適であるといえる理由はなんでしょうか?
これらの質問に明確に答えられないまま投資信託を始めるということは、いわば自分が何をしようとしているかを理解していない状態といえます。
あなたはただ投資信託を選びたいだけでしょうか?それとも、お金を増やしたいのでしょうか?
もし前者であれば、ランキングだけで投資信託を選ぶのも良いでしょう。
しかし、後者で、その手段の一つとして投資信託を選びたいというのであれば、自分が何をしようとしているのか理解していないものに資金を投下するという行為は、もはや投資とはいえないと思います。
また、投資信託のランキングは、その時の流行り廃りが反映されがちです。
そのため、ランキングの中には後述する「テーマ型の投資信託」や「レバレッジ型、インバース型の投資信託」といったものも入ってきます。
こういった一過性のランキングを見て、「今流行っているから」というだけの理由で投資信託を選んでしまうと、本来あなたが購入すべきでない投資信託を選んでしまう可能性が高まります。
これでは本末転倒です。
あなたが選ぶ投資信託は何のための投資信託なのか、なぜその投資信託なのか・・・こういったことが曖昧なまま、ただランキングだけで安易に投資信託を選ぶという行為がいかにナンセンスかということが、本節で最もお伝えしたいことです。
2-2. テーマ型の投資信託から選ぶ
いわゆる、「テーマ型」と呼ばれる投資信託を敢えて選ぶのは、特に投資初心者の人にはおすすめできません。
テーマ型の投資信託とは、対象をある特定のテーマに絞って投資していく投資信託です。
例えば直近だと、
- 人工知能(AI)
- 次世代通信(5G)
- サイバーセキュリティ
- フィンテック
- ESG
- SDGs
- デジタル・トランスフォーメーション(DX)
といったテーマが挙げられます。
そもそも投資信託は長期投資に向いている金融商品です。10年、15年、それ以上と、長く続けることで投資効果を最大化できるのです。
そんな長期投資を前提とした投資信託ですが、テーマ型の投資信託は、次の理由で長期投資に向かないと筆者は考えます。
テーマ型の投資信託が長期投資に向かない理由
- 流行り廃りがあるため当たり外れも大きい
- 高値掴みしてしまう懸念が強い
- 運用コストが相対的に高い
流行り廃りがあるため当たり外れも大きい
まず第一に、テーマ型の投資信託は、投資するタイミングの流行り廃りがあります。「今注目の○○」「今話題の△△」こういったものは、一過性の流行を反映している可能性が否定できません。そのため、テーマ型の投資信託は、そのテーマの将来性を特にしっかり見極める必要があり、比較的難易度の高い投資信託と言えるでしょう。
高値掴みになる可能性が高い
また、テーマ型投資信託が取り上げるテーマは、既に話題になっているものがほとんどです。そのため、既に高値になっている場合も多く、先行者利益を狙うには遅いどころか、その後の成長性は鈍化する懸念も充分考えられるため、長期投資には向かないと言えます。
運用コストが相対的に高い
さらにいえば、テーマ型の投資信託は比較的、運用コストが高めです。信託報酬※が1%を超えるものも多く、流行による当たり外れや高値掴みのリスクを負ってなお、それに見合うコストであるかという疑問も残ります。
※1-3.参照
ちなみに、これは筆者の経験則や主観によるものですが、テーマ型の投資信託が話題になる頃には既に値上がりしきっていて、以降ほとんど成長しないものが多いように思います。せいぜい3年程度ではないでしょうか。
以上より、テーマ型の投資信託は選ぶ難易度が高く長期投資に向かないため、筆者はおすすめしません。
2-3. レバレッジ型の投資信託から選ぶ
レバレッジ型と呼ばれる投資信託は、一般的な(レバレッジ型ではない)投資信託と比べて指数の下落時の損失が大きく長期投資に向かないため、特に投資初心者の人は選ぶべきではないでしょう。
一般的な投資信託は、日経平均株価などの指数に連動するように運用されます。対して、レバレッジ型の投資信託とは、指数の2倍・3倍の運用成果を目指す投資信託です。
指数の2倍・3倍の運用成果を目指すということは、指数が上昇する局面では大きなリターンを狙える一方で、指数が下落する局面では損失もそれ相応に大きくなります。
このような特徴のあるレバレッジ型の投資信託ですが、その注意点について、例を用いて説明します。
下の図は、基準日の基準価額(投資信託の値段)を100としたときの指数に連動した一般的な投資信託と、指数の2倍の値動きの運用をするレバレッジ型(2倍)の投資信託を比較したイメージです。
出典:金融庁 レバレッジ型・インバース型 ETF 等への投資にあたってご注意ください
図のように、指数が1日目は+25%、2日目には-20%という値動きをした場合、レバレッジ型(2倍)の投資信託はその各2倍の動きをするため、1日目は+50%、2日目には-40%という動きをします。結果として2日目の基準価額を見てみると、指数は100に戻っているのに対し、レバレッジ型(2倍)の投資信託のそれは90と指数を下回る結果になっています。
このように、指数の上昇局面では短期的に大きなリターンを狙えますが、下落局面では一般的な投資信託と比べて損失が大きくなるだけでなく、基準価額が指数以上に戻らない可能性がある点がレバレッジ型の投資信託の注意点です。
従って、レバレッジ型の投資信託は短期的な投資に向いた投資信託であり、相応の知識や経験も要するため、特に投資初心者の人にはおすすめしません。
2-4. インバース型の投資信託から選ぶ
インバース型の投資信託は「投資するタイミングが難しく長期投資に向かない」ため、特に投資初心者の人にはおすすめしません。
インバースとは英語で「Inverse」と綴りますが、これは日本語で「逆の」や「反対の」と訳されます。つまり、インバース型の投資信託とは、逆の(反対の)投資信託と訳すことができます。
では何が逆・反対なのかというと、指数に対して逆・反対、という意味になります。
一般的な投資信託は日経平均株価などの指数の値動きに連動するよう運用されますが、インバース型の投資信託は対象の指数と逆の値動きを目指して運用益を出そうとする投資信託になります。たとえば、日経平均株価の指数に連動するインバース型の投資信託の場合、日経平均株価が下がったときに運用益を出すことができます。
このような特徴のあるインバース型の投資信託ですが、インバース型の投資信託は難易度が高く長期投資には向かないため、筆者はおすすめしません。
まず、そもそもとして、指数が下がる方にかけるということは、投資するタイミングがとても重要になります。指数がいつ上がるかという未来を予測することが非常に難易度が高いのと同様に、指数がいつ下がるかという未来を予測することもまた同等に難易度が高いと言えるのです。
また、過去を見ると、特に株式指数は長期的には上昇してきています。もちろん、経済や金融ショックなど指数が下がるタイミング(暴落)もありますが、長期的にみればその期間は数年と限定的です。株価指数は、上がり下がりを繰り返しながらも長期的には上昇しきたという歴史があります。
以上のことから、指数が下がるタイミングをピンポイントで狙うことの難易度や、長期的には株価指数は上昇してきた背景から長期投資に向かないことを鑑み、筆者はインバース型の投資信託をおすすめしません。
3. まとめ
いかがでしたでしょうか。
投資信託で成功するためには選び方が大事です。本コラムでまとめた選び方のポイントや、オススメしない選び方に注意して、運用する投資信託をしっかり見極めてほしいと思います。
ですがポイントが書いてあったとしても、やっぱり自分ひとりで選ぶのは自信がない…という方もいるでしょう。
そんな時は、ぜひファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談してみてください。
信頼できる専門家を味方につけることができれば、投資信託選びだけでなく、その後の運用の不安も持つことはなくなるでしょう。
弊社FPバンクは、お金の不安を解決する独立系のファイナンシャルプランナー事務所です。
投資信託の選び方はもとより、投資や資産運用全般のご相談も承っており、運用に関する相談は特に近年増えてきているものでもあります。
初回相談は無料で受けていただくことができるので、投資信託の選び方で迷ったらぜひ利用を検討してみてください。あなたにとって信頼できるアドバイザーと出会えましたら、筆者としてこの上なき喜びです。
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