住宅購入の時、頭金をいくらにするか? 頭を悩ませる方も多いでしょう。中には「なるべく多く頭金を出したい」という方もいらっしゃいます。そもそも住宅ローンにおける頭金とは、諸費用を除いた最初に支払えるお金のことです。
目次
1.頭金を正しく理解しよう
「頭金」と同じような言葉に「自己資金」というものがあります。「自己資金」とは住宅購入にあたり、自分で用意するお金のことで、「頭金」と「諸費用」に大きく分かれます。
(1)「頭金」と「諸費用」は違う
「頭金」と「諸費用」はなにが違うのでしょうか?両者の違いは、物件価格に含まれるかどうかです。例えば、3000万円の中古物件を購入するとしましょう。「自己資金」は500万円とします。中古物件の「諸費用」は一般的に物件価格の10%程度と言われていますから、約300万円。残りの200万円が頭金となり、物件価格から「頭金」を引いた2800万円のローンを組むことになります。
(2)「諸費用」まで借りるといろいろ大変
「諸費用」と言っても、内訳は様々です。内訳の中で大きく占めるのが、不動産業者に払う仲介手数料やローンを組む時の手数料です。実はこの「諸費用」も金融機関から借りることはできますが、金利が高くなる場合もあります。最悪の場合、将来的に借換えができないなどというケースもあり、注意が必要です。住宅購入を目指す人は、まずは諸費用分の「自己資金」を貯めることから始めましょう。
2.頭金を多く出すとこんなに良いことがある
「諸費用」を出した残りの自己資金が「頭金」となるわけですが、「頭金は多いほどいい」は本当でしょうか?頭金を多く出すことのメリットは、大きく分けて2つあります。
(1)金利の優遇が受けられることがある
頭金を多く出すことによって、有利な条件で住宅ローンを組めることがあります。例えば、住宅支援機構が行っている「フラット35」では、頭金を1割出せるかどうかで適用される金利が変わってきます。両者の金利差は約0.4%。長期間に渡って支払いを続ける住宅ローンの場合、この金利差は結果として大きなものになります。
(2)ローン金額が減ることで返済額も減る。
もう一つ、当たり前のことですが、頭金を多く出すことでローン金利が減り、その分の利子を払わずに済みます。住宅ローンの金利が高ければ高いほどその効果は大きく、利子だけで数十万円~数百万円の差になる可能性もあります。また、「頭金」を多く入れて住宅ローンの返済期間を短くすることで、金利負担を抑える方法もあります。
3.大事なのは頭金じゃない
こうして見ると、頭金はできるだけ多く入れた方が良いというのは間違いではありませんが、ちょっと待ってください。長い人生において本当に大事なのは「頭金をいくらにするか?」ではありません。
(1)目先の損得にこだわらない
住宅購入に限らず、私たちはなにかと目先の損得にこだわりがちです。ちょっとでも安い方、ちょっとでもお得な方に目が行ってしまいます。しかしながら、長い人生の中で、本当に大事なのは、目先の損得ではありません。人生の中でどうお金の収支が動いていくかが重要です。「実は数年以内にまとまった教育費が必要だったのに、借入額を極力少なくしたくて頭金を多く出しすぎてしまい、教育費を現金で準備できなくなった…。教育ローンを組まなければいけなくなった…。」とならないように10年~20年以内の収支で問題がないかどうか?を確認することが重要なのです。
(2)ライフプランのキャッシュフロー表を考える
私たちは日々の生活の中で、絶えず収入を得、その一方で支出しています。その収支の差額が貯金となります。お子様が幼い時期は、一般的に教育費も生活費も大きくかかることはありませんので、生涯の中で、たくさん貯金ができる時期かもしれません。そんな時期に頭金を多く入れても、収支が回らなくて貯蓄できない!なんてことにはならないかもしれません。が、何の根拠もなく、「大丈夫でしょう!」と頭金を多く出しすぎてしまうのは、とても危険です。住宅購入時に貯金を使いきってしまい、その後の生活費や子どもの教育費が家計を圧迫してしまい、住宅ローンで破綻!なんて方も、実は少なくないのです。住宅ローンで多少の得をしたとしても、その後の生活が成り立たないのでは意味がありません。どれくらいの頭金を出せば大丈夫なのか?それを把握できるツールがあります。「キャッシュフロー表」です。キャッシュフロー表とは、一定期間ごとの家計の収入と支出から、増減する資産どのように推移していくか、人生のお金の流れがを把握する表のことです。これからの人生の収支が一目でわかり、蓄えてきた金融資産が人生の途中で枯渇しないようにするために、この「キャッシュフロー表」がとても有効です。
4.まとめ
「借金はなるべく少なくしたい!」「ローンはなるべく早く終わらせたい!」多くの人が思うことです。ただし、あまり損得にばかり気を取られてしまうと思わぬかたちで足元をすくわれる結果にもなりかねません。ライフプラン上のキャッシュフロー表という観点から「住宅ローン」について考えてみれば、きっと皆さんにとって最適な頭金と住宅購入予算がわかるはずです。
豊かな人生は、住宅購入だけにはないのですから。
2019年6月20日
text by 久保田 正広
FPバンク