養子と言ってもこれには、「普通養子」と「特別養子」の2つの養子縁組があります。それぞれ縁組の成立要件が異なりますので、自分が検討すべき要件はどちらなのか?しっかり把握して誤解のないようにしましょう!
目次
1.「養子」には二種類ある
「養子」と言っても、民法上では「普通養子」と「特別養子」の二種類存在するのをご存知でしょうか?
(1)普通養子とは?
「普通養子」とは、血の繋がった実の親との親子関係を残したまま、養親と新しく養子縁組を行うことです。つまり普通養子には二組の親が存在するということになります。実の親と養親の両方に対して、相続する権利や扶養を受ける権利を持ちます。
(2)特別養子とは?
一方の「特別養子」は、養子縁組の日から子としての身分を取得する点は普通養子と同じですが、この時点で実の親との親子関係がなくなってしまうことが特徴です。文字通り「親子の縁を切って」新しい養親の子となると考えれば良いでしょう。つまり特別養子縁組には養親に対してのみ相続する権利や扶養を受ける権利を持ちます。
2.民法上の「養子」の考え方
相続を取り巻く法律には、大きく「民法」と「税法」の二つがあります。この二つをキチンと区別して理解しないと、思わぬ混乱を招くことになります。
(1)民法上の「養子」
「普通養子」「特別養子」ともに縁組の日から養親の嫡出子となります(民法809)。したがって養子と実子と同様に、養親の法定相続人となります。法定相続人にはそれぞれの法定相続分がどれだけなのかが定められています。この民法に関しては、養子は実子となんら変わることがありません。実子と同じように相続人となり、実子と同じ相続分が与えられるのです。
(2)普通養子と特別養子の違い
ただ注意したいのが、「普通養子」と「特別養子」との権利の違いです。前述のように普通養子は実親と養親の双方と親子関係がありますから、どちらの相続人にもなれます。しかし、特別養子は実親との親子関係は終了していますので、こちらの相続人とはなりません。血が繋がった子供であっても、法定相続人になれないのです。
3.税法上の「養子」の考え方
一方、税法上の「養子」はどのように考えられているのでしょうか。民法との違いには注意が必要です。
(1)税法上は実子と大きく違う
相続に関する「税法」は、「誰がいくらの相続税を負担するか」を決める法律です。民法上では実子となんら変わることのない養子ですが、税法上は法定相続人としてカウントできる数に制限が設けられています。被相続人(養親)に実子がいる場合は一人まで、実子がいない場合でも二人までしか養子は法定相続人としてカウントされません。
(2)節税の効果は限定される
なぜこのような制限があるのでしょうか。もしこのような制限がなければ、どんどん名目上の養子を増やし、相続税の基礎控除額等(非課税限度額)を吊り上げて相続税額を圧縮するというやり方が横行してしまうからです。逆に言えば、こうした制限がある以上、相続税の節税目的で養子縁組を行うのはあまり賢いやり方とは言えないでしょう。
4.まとめ
相続に関して言えば、民法と税法それぞれの観点で「養子」がどういった扱いをされるのかを理解する必要があります。相続と聞くと節税対策だけに意識がいってしまう方も少なくありませんが、幸せな相続は円満な分割ができてこそのものです。節税対策だけでなく、全体を包括的に考えることが重要です。
2019年9月12日
text by 久保田 正広
FPバンク