内縁の妻に相続権はあるのか?

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そもそも、内縁の妻に相続権はあるのでしょうか。その答えを知るためには、まず「相続人」という言葉を正しく理解する必要があります。

1.内縁の妻に相続権はあるのか

(1)「相続人」の定義

「相続人」、正しくは「法定相続人」は、その名の通り「法で定められた相続人」。ここでの法とは民法を指します。国税庁のサイトには以下のように記載されています。少し長いですが引用します。

《相続人の範囲》*1)
死亡した人の配偶者は常に相続人となり、配偶者以外の人は、次の順序で配偶者と一緒に相続人になります。

  • 第1順位
    死亡した人の子供
    その子供が既に死亡しているときは、その子供の直系卑属(子供や孫など)が相続人となります。子供も孫もいるときは、死亡した人により近い世代である子供の方を優先します。
  • 第2順位
    死亡した人の直系尊属(父母や祖父母など)
    父母も祖父母もいるときは、死亡した人により近い世代である父母の方を優先します。
    第2順位の人は、第1順位の人がいないとき相続人になります。
  • 第3順位
    死亡した人の兄弟姉妹
    その兄弟姉妹が既に死亡しているときは、その人の子供が相続人となります。
    第3順位の人は、第1順位の人も第2順位の人もいないとき相続人になります。

つまり、被相続人に子供がいれば「配偶者と子供」、子供がいなければ「配偶者と親」、子供も親もいなければ「配偶者と兄弟姉妹」と相続権が移っていきます。このように配偶者は常に相続権を持つ存在です。

〈出典〉*1) 国税庁ホームページ(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4132.htm
閲覧日:2019.5.7)

(2)原則的には内縁の妻は受け取れない

ただし、国税庁の記載には続きがあります。
「なお、相続を放棄した人は初めから相続人でなかったものとされます。また、内縁関係の人は、相続人に含まれません。」
法定相続人と同じように、「配偶者」という言葉も法律用語です。民法上「婚姻は、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その効力を生ずる」と定められていますので、戸籍上の届け出をしていない内縁の妻は配偶者ではないということになります。当然、法定相続人としての地位は認められません。

2.特別縁故者ならば受け取れる可能性も

それでは内縁の妻は遺産を受け取ることができないのでしょうか。実は、内縁の妻でも遺産を受け取れる可能性があります。

(1)「特別縁故者」とは?

その方法の一つは、家庭裁判所に申し立てをして「特別縁故者」として認めてもらうことです。特別縁故者とは「相続人以外の者で被相続人と生計を同じくしていた、被相続人の療養看護に努めた等、その他特別の縁故関係があった者」のことで、この特別縁故者には家庭裁判所が遺産の全部または一部を分与することができるとされています。

(2)受け取るには条件がある

まさに内縁関係にある人に遺産を相続させるための仕組みですが、実は特別縁故者が遺産を受け取るには一つ条件があります。それは「他の相続人がいない場合」に限られるのです。先ほどご説明した法定相続人が一人でもいれば、特別縁故者に遺産分与は認められません。

3.遺言を活用しよう

法定相続人がいる状況で、内縁の妻に遺産を残すにはどうすれば良いでしょうか。もっとも有効な手段は、遺言書を活用することです。

(1)遺言書の効果

「遺言書」と聞くとなにやら資産家にしか縁のないように思う方もいらっしゃるかも知れませんが、そんなことはありません。被相続人の死後、遺族が揉めないようにするためには、遺言書の活用は不可欠です。事実、家庭裁判所に持ち込まれる相続争いの3割以上は遺産総額が1000万円以下のケースで占められています。分割が上手くいかないと遺産が少額でも争いごとは避けられません。相続人に争いが起こらない分割への道標となるのが遺言書と言っても良いでしょう。
また、遺言書で指定すれば相続人以外に財産を遺すことも可能です。内縁の妻に相続させたいのであれば、遺言書は有効な手段になります(この場合は、厳密には「相続」ではなく「遺贈」となります)。

(2)遺留分には注意が必要

もちろん、注意点もあります。誤解されている方も多いのですが、遺言書があったからといって必ずその通りに遺産分割をしなければならない訳ではありません。遺産分割協議で相続人全員の意志がまとまれば遺言書と異なった分割をすることも可能です。裏を返せば、遺言書があったとしても争いがゼロになるとは限らないのです。
ここで気を付けなくてはならないのが、「遺留分」です。遺留分とは法定相続人に与えられた権利で、たとえ遺言書で「資産を遺さない」と指定されても、法的に決められた分だけは自分の持ち分を主張できるというものです。遺留分は法定相続分の半分とされていますから、例えば相続人が配偶者と子供二人のケースであれば、子供の遺留分は1/4となります。
遺言書で内縁の妻の持ち分を指定する時に、他の相続人の遺留分を侵害している内容だと結局トラブルに発展する可能性は高いと考えられます。始めから遺留分を考慮した内容にしておくことが肝心です。

4.まとめ

今後、ますます戸籍にとらわれない婚姻の形が増えていくでしょう。いつか「配偶者」という言葉の定義も変わる時代がやってくるかもしれませんが、現状の法制度では内縁関係の方に資産を遺すには工夫が必要です。手遅れになる前に、今できる対策は早めに講じておきましょう。

 

2019年7月29日
text by 久保田 正広
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