
ETFとは、株式と同じように東京証券取引所などの金融商品取引所に上場している投資信託のことです。
TOPIXや日経平均といった特定の指数に連動するものの他に、配当の高い銘柄に絞って分散投資を行うもの、債券や金の価格に連動するものもあります。
この記事では、これからETFに投資を検討している方向けに、ETFとは何か、投資信託との違いやメリット、デメリットといった点をわかりやすく解説します。
目次
1.ETF(上場投資信託)とは?
ETFとは「Exchange Traded Funds」の略語です。金融商品取引所に上場している投資信託を指します。
TOPIXや日経平均など特定の指数(インデックス)に連動した値動きをするものの他に、REIT(不動産投資信託)や債券、通貨、金などのコモディティに連動するものもあり、バリエーションが豊富です。
ETFは上場していますから、株式と同じように、市場の価格を見ながら売買の注文を出して取引します。価格の変動が1日1回の非上場型投資信託と異なり、例えば日経平均に連動するETFなら、日経平均株価と同じように市場が開いている時間は価格が刻々と変動します。
株式と同様に、ETFを取り扱えるのは証券会社だけです。銀行や郵便局ではETFの取り扱いがありません。
(1)投資信託との違い
ETFと投資信託の違いを表にすると、以下のようになります。
(ETFと投資信託の違い)
ETF | 投資信託 | |
上場 | している | していない |
NISA口座対応 | 成長投資枠に対応 | 成長投資枠・つみたて投資枠、 どちらにも対応 |
価格が決まるタイミング | リアルタイム (市場が空いている時間は価格が変動する) |
1日1回算出される基準価額 |
注文の方法 | 成行注文・指値注文が可能 | 価格を指定しての購入は不可 |
購入時の手数料 | 証券会社によって手数料が異なる (無料の証券会社もある) |
投資信託ごと、 販売会社ごとに手数料が異なる (無料のものもある) |
保有中の手数料 | 非上場の投資信託に比べて低い | 一般的にETFより高め |
売却・解約の手数料 | 証券会社ごとの手数料 (無料の証券会社もある) |
投資信託によっては 信託財産留保額や 換金手数料がかかる |
最低購入金額 | 数百円~ | 100円~ |
分配金の自動再投資 | 対応していない | 対応している |
自動積立の有無 | 証券会社によるが、 自動積立できないところが多い |
銘柄によって異なるが、 毎月自動積立できるものもある |
向いている人 | すでに投資信託で運用をしており、 他の投資先を検討している投資中~上級者 |
これから投資を始めようと 思っている投資初心者の方 |
(2024年5月時点)
最低購入金額が100円からで価格の変動が1日1回である非上場の投資信託と異なり、ETFは購入金額が数百円から数万円と幅が大きく、市場が空いている時間は価格が変動しています。
リアルタイムで価格を見ながら売買でき、指値注文もできるので、自分のタイミングで注文したい人に向いていると言えます。
とはいえ、これだけではETFをイメージできない方も多いはずです。2024年5月現在の実際のETFと投資信託を比べてみてみましょう。
iFree ETF TOPIX(1305) | iFreeTOPIXインデックス | |
価格 | 29,100円 | 23,975円 (証券会社によっては100円から購入可能) |
信託報酬 | 0.066% | 0.154% |
分配金利回り | 1.81% | なし |
リターン | 6カ月:+17.92% 1年:+32.82% 3年:+58.12% |
6カ月:+17.88% 1年:+32.69% 3年:+57.87% |
(2024年5月時点)
※単に事例として列挙しているものであり、上記の銘柄を推奨しているわけではありません。
どちらもTOPIXの値動きと同じになるように運用されているので、リターンはほぼ同じです。
ETFの方が購入価格が高く、約3万円ほどかかりますが、信託報酬が低く、分配金が出ている点が大きな違いといえます。
保有中に分配金の受け取りを楽しみたい人は、ETFを分散投資の運用先として検討してみてください。価格やコスト、分配金の利回りは銘柄ごとに異なるので、購入前の確認をお忘れなく。
反対に、少額から投資を始めたい人やNISA口座を活用したい人は投資信託を検討してみてください。投資信託は、NISA口座の成長投資枠とつみたて投資枠、どちらにも対応しているものが多くあります。
2.ETFのメリット
ETFのメリットは、少額で分散投資できる、値動きがわかりやすい、コストが低いの3点です。その理由をわかりやすく説明します。
(1)少額で分散投資できる
ETFのメリットは少額で分散投資ができる点です。
1つの銘柄だけに投資をしてしまうと、その銘柄が値下がりした時に資産が大きく目減りしてしまうリスクが高くなります。反対に、複数の銘柄に分散投資していれば、1つが値下がりしても他の銘柄が値上がりしていて資産を守れる可能性が高まります。
とはいえ分散投資を実践しようとすると、まとまった資金が必要になってしまいます。例えば日経平均は、ファーストリテイリングやKDDIといった日本を代表する225社の株価から算出されています。もしこの225社に株式で投資をしようとすると莫大な資金が必要になります。
しかし日経平均に連動するETFであれば、1つのETFを購入するだけで225社に分散投資ができます。TOPIXに連動するものや、高配当の企業に絞っているETFにも同じことが言えます。
代表的なETFの組入銘柄数を表にまとめてみました。
(一般的なETFの組み入れ銘柄数)
銘柄名 | 上場インデックス ファンド225(1330) |
上場インデックス ファンドTOPIX(1308) |
NEXT FUNDS 野村日本株高配当 70連動型上場投信(1577) |
組入銘柄数 | 225銘柄 | 2,160銘柄 | 70銘柄 |
(2024年5月時点)
※単に事例として列挙しているものであり、上記の銘柄を推奨しているわけではありません。
1本のETFを購入するだけで、多くの銘柄への分散投資が叶うことが分かるかと思います。この他にも、東証のグロース市場に連動するものや、スタンダード市場に連動するものなど多くの種類があります。自身のリスク許容度に合わせたETFを選んでください。
(2)値動きがわかりやすい
ETFはリアルタイムで市場の値動きを見られるので、価格の推移がわかりやすいというメリットもあります。
投資信託は1日1回算出される基準価額での売買になります。購入や売却の注文を出した時点では、いくらで取引できるのかわかりません。市場の状態によっては、注文を出した後、急激に値上がりしたり値下がりして、思った価格で売買できないこともありえます。
その点ETFは市場価格での取引なので、いくらで売買注文が決まるのか、すぐにわかる点もメリットといえます。
他にも、ETFのインデックス型は特定の指数(日経平均やTOPIXなど)に価格が連動しています。日経平均が下がればETFも値下がりし、値上がりしたら同じく値上がりするので、値動きを簡単に把握できる点もメリットでしょう。
(3)コストが低い
投資信託のコストは、売買時の手数料と保有中の手数料です。
非上場の投資信託は、販売会社への手数料や運営に関する事務手数料がかかるため、信託報酬が高めになっています。反対に、ETFは運用に関する費用が低いため信託報酬も低めになっています。
とはいえ、非上場の投資信託もETFでも、かかるコストは銘柄によって異なるので、購入前によく確認しておきましょう。
実際に購入できるETFと投資信託を、同じ指数に連動するもので信託報酬を比較してみました。
(ETFの信託報酬の一例)
銘柄名 | MAXIS 日経225上場投信(1346) |
iシェアーズ・コア TOPIX ETF(1475) |
NEXTFUNDS東証 REIT指数連動型 上場投信(1343) |
信託報酬 | 0.12% | 0.045% | 0.155% |
(投資信託の信託報酬の一例)
銘柄名 | たわらノーロード 日経225 |
iシェアーズ・TOPIX インデックス・ファンド |
eMAXIS Slim 国内リートインデックス |
信託報酬 | 0.143%以内 | 0.1133%程度 | 0.187% |
(2024年5月時点)
※単に事例として列挙しているものであり、上記の銘柄を推奨しているわけではありません。
ETFと投資信託の銘柄によって異なりますが、ETFの方が信託報酬が若干低い傾向にあることがわかります。
3.ETFのデメリット
ETFのデメリットは最低購入金額が高めになっている点とNISA口座に対応しているものが少ない点です。
(1)最低購入金額が高め
ETFは非上場の投資信託と比較して、最低購入金額が高くなっています。
非上場の投資信託は最低購入金額が低く、証券会社によっては100円から購入できるところもあります。
例えば「野村世界業種別投資シリーズ(世界半導体株投資)」は、基準価格が2024年5月時点で148,950円となっています。しかし、この投資信託を購入するのに14万円もの資金は必要ありません。証券会社にもよりますが、100円以上1円単位で買付が可能です。非上場の投資信託は、少額で始められるので投資初心者におすすめです。
一方で、ETFは1口での注文になります。銘柄によって異なりますが、日経平均に連動するものでは3万円程度の資金が必要です。一方で、TOPIXに連動するものは3,000円程度でも購入可能です。少額でも始められますが、100円から投資可能な非上場型の投資信託と比較すると少し高めであることがわかります。
(2)NISA口座に対応しているものが少ない
ETFのデメリットの2つ目は、NISA口座に対応しているものが少ない点です。
対して非上場型の投資信託は、銘柄にもよりますがNISA口座の成長投資枠とつみたて投資枠、どちらでも売買できるものが多くなっています。
ETFは成長投資枠での売買が可能ですが、2024年5月現在成長投資枠に対応している非上場型の投資信託とETFの銘柄数は以下の通りです。
(成長投資枠に対応している銘柄数比較)
非上場型の投資信託 | ETF | |
対応銘柄数 | 1,914銘柄 | 310銘柄 |
とはいえ、すでにNISA口座の成長投資枠で非上場型の投資信託を積み立てしていて、他の分散投資先を検討している人にはETFはおすすめです。
反対にまだ投資を始めたことがなく、何に投資すべきか悩んでいる人であれば、まずはNISA口座で非上場型の投資信託を積み立てると良いでしょう。
4.ETFは運用商品として魅力的か
ETFのメリットとデメリット、運用に向いている人をまとめてみると以下のようになります。
(ETFのメリット、デメリット、向いている人)
メリット | ●少額で分散投資できる ●コストが低い ●自分で値段を確認しながら売買できる |
デメリット | ●非上場型の投資信託と比較して価格が高い ●値動きを追うのが大変 ●NISA口座に対応しているものが少ない |
ETFはこんな人におすすめ | ●すでに投資信託の積立を始めており、他の投資先を探している投資中~上級者の人 ●リアルタイムで売買する時間や投資の知識や経験がある人 |
ETFは取引所が空いている時間は、価格が変動します。そのため、常に価格変動を確認できる人や投資に知識のある人におすすめの金融商品といえるでしょう。
投資初心者の人には、ファイナンシャルプランナーやIFAからのアドバイスを受けながら、自分に合った運用商品を決めることをおすすめします。
5.まとめ
ここまでETFの基本情報から、投資信託との違い、メリット、デメリットなどを詳しく、そしてわかりやすく解説しました。
ETFは株式と同じように、金融商品取引所に上場している投資信託のことです。
非上場型の投資信託と比較すると、信託報酬が低めの代わりに最低購入金額が大きく、リアルタイムで取引できる点が異なります。
投資信託とETFは、どちらもメリット・デメリットがあり、どちらが良い・悪いというものではありません。自分自身の投資状況やリスク許容度を鑑みて、投資先を判断してください。
NISA口座を活用したい人、投資初心者の人で何を買うべきか悩んでいる人は非上場型の投資信託がおすすめです。NISA口座に対応している銘柄が多く、証券会社によっては100円から始められます。
一方で、すでにNISA口座で投資信託の積立を開始しており、他の運用先を検討している投資中〜上級者であれば、ETFがおすすめです。信託報酬が低く、市場価格で取引ができるので自身のタイミングで売買の注文が出せる点もETFのメリットです。
資産運用を始めたいけれど何を買うべきかわからない、どのような人がETF投資に向いているのか知りたいと悩んでいる人はぜひ一度、お金のプロに相談してみてください。