投資信託は貯金の代わりにはなりません。なぜなら、投資信託は、元本保証がなく、損失が発生する可能性があるからです。 また、売却が成立するまでいくらで受け取れるかわからない、現金化するまで日数がかかることも理由です。
では、どのようなお金を投資信託にまわせばいいのでしょうか。
この記事では、投資信託が貯金の代わりにならない理由と具体例を解説していきます。
本コラムで分かること
- 投資信託に回すべきお金の特徴
- 投資信託が貯金の代わりにならない理由
- 投資信託と貯金のベストなバランスの見つけ方
目次
1.投資信託は貯金の代わりにはならない
貯金も投資信託も、将来的な支出に備えてお金を積み立てることでは共通していますが、貯金にするべきお金と投資信託にするべきお金は特徴が異なります。
その違いは何なのでしょうか?違いについて解説していきます。
1-1. 貯金にするべきは「減ったら困るお金」
貯金にするべきは「減ったら困るお金」です。
ではまず、減ったら困るお金を考えてみましょう。例えば次の3つの資金が挙げられます。
- 非常時の資金
- 教育費や医療費
- 住宅購入費
【非常時の資金】
非常時の資金とは、災害や病気など、予期しない出来事に対処するための資金のことです。
コロナ感染拡大によって、世界の経済活動がストップしてしまったことは、記憶に新しい災害ではないでしょうか。
「コロナショック」と言われる経済ショック、2020年2月~3月、世界の株価は急落しました。
経済的な影響は株価だけに限らず、職種によっては、年収が大幅に減ってしまい、生活が苦しくなってしまった人も少なくなかったです。
そんな事態が起こった場合、ほとんどのお金を投資信託で貯金していたらどうでしょうか?
一方で、ほとんどのお金を銀行で貯金していたらどうでしょうか?
非常時の資金は、やはり後者の「貯金が充分」であれば、焦ることなく対処できるのは想像に難くないです。
【教育費や医療費】
子供の教育費や高額な医療費がかかることが想定される場合、必要な資金を貯金しておくことは重要です。
特に教育費は、必ず準備しなければなりません。
例えば、教育費の準備目的で殆どのお金を投資信託に預けた、まとまった教育費が本当に必要になった時に株価が急落して投資信託の価格が大幅に下がってしまったら、どうでしょうか?
私立中高入学や、大学の教育費を増やすつもりが、減らしてしまったら、結局、準備ができなくなる可能性があります。準備ができなかったことが理由で、子供に進路を諦めてもらうことは、親としては不本意になるでしょう。
増やすことだけを考え、減るリスクもあることには目をつぶってしまうことは危険です。
【住宅購入費】
住宅購入の際、自己資金をある程度準備しておく必要があります。
最近は自己資金を出さずにフルローンを組む人も増えていますが、見落としがちなのは「借入できる金額」です。住宅ローンの借入可能額は「年収」で異なります。また、銀行によって借入額の「本審査承認金額」も異なります。
本審査の結果が借入希望額に達しない場合は、自己資金を出さざるを得ません。そんな時、充分な貯金がなければ、投資信託を売却し、自己資金を捻出しなければならなくなります。
教育費準備の理由と同様、その時に限って株価が急落して投資信託の価格が大幅に下がっていたら、どうでしょうか?投資信託には、元本割れというリスクがあります。そのリスクが現実化した際には、資金繰りに困ってしまう可能性が高くなります。
以上のことから、減ったら困るお金は貯金として確保するべきです。
1-2. 投資信託に回すべきは「当面使わないお金」
では投資信託に回すべきなのはどんなお金なのかというと、「当面使わないお金」です。
投資信託は、市場の変動によって元本が減少するリスクがあるため、これに回すお金は日常生活に影響を及ぼさない範囲にすることが重要です。
例えば、定期預金や普通預金に入れている生活費や教育費に充てるお金を投資信託に回すと、元本が減少した場合に大変困った事態になると考えられます。
また、投資信託に回すお金を選ぶ際には、自分のリスク許容度や目的に合わせた商品を選ぶことが大切です。例えば、リスクを取りたくない方は債券や一般的な預金商品を選ぶことができますが、リスクを取ってリターンを狙いたい方は株式や高利回り商品を選ぶことができます。信託報酬や手数料なども考慮に入れ、自分に適した商品を選んで投資信託に回すことがおすすめです。
さらに、投資信託を利用する場合のリスク分散には、積立投資が効果的です。毎月一定額を投資信託に積立てることで、投資金額が分散され、リスクが低減される効果が期待できます。一括で購入するよりも、毎月少額ずつ投資することで、長期的な資産形成を目指すことができます。
最後に、投資信託を利用する際には、資産運用に関する知識を身につけることが大切です。投資信託以外にも、株式投資や債券投資、ETF、NISA、iDeCoなど様々な金融商品が存在し、それぞれにメリットやデメリットがあります。資産運用に関する知識を身につけ、自分に適した運用方法を見つけて、当面使わないお金を有効に活用しましょう。
1-3. 「減ったら困るお金」でリスクをとるべきではない
リスクを伴う投資は、「減ったら困るお金」を使うべきではありません。理由は、投資にはリスクが存在し、資産の価値が下落する可能性があるからです。具体例として、株式投資や投資信託などの金融商品は、市場の状況によって価格が上下します。そのため、資金を必要とするタイミングで投資商品の価格が下落していると、元本割れや損失が発生するリスクがあります。
それを防ぐために、必要な時にリスクのない形でお金を引き出せる資産運用方法を選ぶことが重要です。例えば、普通預金や定期預金は元本保証があり、予定通りの期間を経過すれば金利もつくため、お金が減ることがありません。ただし、その代わりにリターンは低いことを受け入れる必要があります。
結論として、「減ったら困るお金」は安全な運用方法で管理し、別途リスクを取れる資金で投資を行うことがバランスの良い資産運用に繋がります。
2.投資信託を貯金の代わりにした時に起こりうる3つのこと
2章では、投資信託を貯金の代わりにした時に起こりうることについてご紹介します。
お金が必要になった際に投資信託にお金を入れていると、どのような事態が発生する可能性があるのか、本章でしっかり確認しておきましょう。
2-1. お金を使いたい時に減っていることがある
投資信託を貯金の代わりにすると、お金を使いたい時に資産が減っていることがあります。
これは、投資信託のリターンが株式や債券などの市場価格に依存するため、市場の状況によって価格が変動するからです。
具体例として、投資信託における株式や債券の価格は、経済状況や企業の業績、金利など様々な要因によって影響を受けます。そのため、使いたい時に資産が減っているリスクが常に存在します。一方で、投資信託は長期的な運用を前提としているため、短期的な価格変動に左右されず、長期的なリターンを追求することが推奨されます。
したがって、お金を使いたい時に減っているリスクを回避するためには、貯金と投資信託を別々に管理し、貯金は安全な運用方法で保全することが望ましいです。また、緊急時に備えて、予め使いたい時期に合わせて資産を現金化する計画を立て、無理のない資産運用を心がけることが重要です。
2-2. 注文が成約するまでいくらで受け取れるかわからない
投資信託は資産運用の一つで、通常は資金をプールしてプロのファンドマネージャーが運用する商品です。投資信託を購入する際には、受け渡し日までの間に価格が変動し、いくらで受け取れるかがわからないことがあります。
例えば、当日単価採用の投資信託は、受け渡し日が当日であるため、注文が成約するまでの間に価格変動が生じることは少ないです。しかし、翌日単価採用の投資信託では、受け渡し日が翌日になるため、注文が成約するまでの間に価格変動が生じる可能性があります。
このように、注文が成約するまでいくらで受け取れるかわからない点は投資信託のリスクの一つでもあります。投資信託を選ぶ際には、このリスクを理解しておくことが重要です。リスクの分散を図るためにも、投資信託の組み合わせを考慮することがおすすめです。例えば、株式投資と債券投資を組み合わせたり、国内投資と海外投資を組み合わせたりすることで、リスクを分散することが可能です。
投資信託は長期運用を前提としているため、受け渡し日の価格変動に一喜一憂するのではなく、適切な資産形成を目指して積立投資などを活用することが大切です。また、自分の投資スタイルやリスク許容度に合った投資信託を選ぶことも重要です。
総じて、投資信託の注文が成約するまでいくらで受け取れるかわからない点は、リスクの一部ですが、長期的な視点で適切な資産運用を行うことで、このリスクを乗り越えることができます。
2-3. 現金化するまで日数がかかる
投資信託は、資産運用の一つであり、資金をプールして運用する商品です。ただ、投資信託には現金化するために日数がかかるというデメリットも存在します。
資産運用においては、リターンだけでなく、資金の流動性も重要なポイントとなります。資金の流動性が高い場合、緊急事態に対応しやすく、資金を活用しやすいです。しかし、投資信託はその流動性が必ずしも高くはありません。
投資信託を現金化する際には、基本的には査定額の確定後に資金が振り込まれるため、数日間のタイムラグが発生します。また、投資信託によっては、解約手続き自体にも日数がかかる場合があります。これにより、急な資金ニーズに対応しにくいというデメリットが生じます。
投資信託を選ぶ際には、現金化にかかる日数も考慮に入れることが重要です。また、資金の流動性が低い投資信託を選ぶ場合は、資産運用のバランスを見直し、現金化のしやすい金融商品(例:定期預金や貯金)と組み合わせることで、資金ニーズに対応できるようにする必要があります。
総じて、投資信託の現金化にかかる日数はデメリットではありますが、適切な資産運用の戦略を立てることで、このデメリットをカバーすることができます。
3.投資信託と貯金のベストなバランスの見つけ方2選
3-1. 専門家に相談する
投資や資産運用を始める際には、専門家の意見を取り入れることが大切です。特に、ファイナンシャルプランナーに相談することで、自分に適した投資方法や資産運用に関するアドバイスを得ることができます。
ファイナンシャルプランナーは、投資や資産運用に関する幅広い知識や経験を持っています。また、IFA登録されたファイナンシャルプランナーは、業務が独立していて、顧客の利益を最優先に考えることができるため、なおいい相談相手と言えます。
具体的には、自分のライフプランや目標に沿った投資ポートフォリオの組み立て方や、資金の分散投資の方法など多岐に渡るアドバイスを受けることができます。さらに、リスク管理や税金対策、老後資金の準備など、投資だけでなく幅広い資産運用に関する知識も得られます。
まずは、インターネットや口コミで評判の良いファイナンシャルプランナーを探し、相談のアポイントメントを取ることをおすすめします。最初の相談だけでなく、定期的なフォローアップも重要ですので、遠慮なく専門家に相談して、自分に適した投資や資産運用を進めていきましょう。
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3-2. 将来までのキャッシュフローを試算する
将来までのキャッシュフローを試算することで、自分がどれくらいの資金を準備すべきか把握することができます。試算の結果をもとに、投資の目標や資産運用の方法を見直し、適切なアクションを起こしていくことが大切です。
まずは、自分の収入や支出を明確に把握し、これからのライフイベントや目標に対して必要なお金を計算しましょう。例えば、子供の教育費、住宅購入やリフォーム、老後の生活費など、将来必要になるであろう金額をリストアップします。
次に、金利やインフレ率など経済状況を加味し、現在の資産や収入を将来的にどれくらい増やすことができるかを試算します。また、投資や資産運用によるリターンや税金処理も考慮に入れて、適切なキャッシュフロー管理を行っていくことが求められます。
こうした試算を行うことで、どれくらいの金額が将来必要になるか判明し、投資や資産運用の目標を明確に設定することができます。これからの投資や資産運用に向けて、まずは自分がどれくらいの資金を用意すべきか把握し、適切なアクションを起こしましょう。
まとめ
このコラムを読んでいる人の中には、独身の人、既婚者の人、子供の教育費がこれからかかる人、住宅購入を検討している人、老後が目の前に迫っている人、などなど様々な方がいらっしゃることでしょう。
どんな世代の人にも、必ず適した「貯金に回すお金」「投資信託に回すお金」の額はあります。
その金額を知るために有効なのは「ライフプラン」を作成することです。
世界的な物価上昇の影響で、日本でも継続的に物価が上がり、インフレ傾向が強まっています。
現預金だけで貯金をしても、額面は変わりませんが価値は下がってしまいます。
一方で、一般的に株式投資信託はインフレに強い金融資産と言われています。それは、インフレ下では商品が売れ、企業業績もよくなり、物価上昇に連動して株価も上昇する傾向があるからです。
毎月、毎年貯蓄していくお金の中で、「貯金に回すお金」「投資に回すお金」の配分を把握し、一生涯資産を守る手段としての投資を始められように、先ずはファイナンシャルプランナーに相談することからはじめてはいかがでしょうか?
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