運用初心者でも始めやすいと人気の毎月分配型投信。一方で良くない噂を耳にすることも。果たして毎月分配型投信は善か?それとも悪か?その本質に迫ります。
1.毎月分配型投信とは?
運用初心者から中級者まで、根強い人気を誇る毎月分配型投資信託ですが、一方で酷評もよく耳にします。
では、そもそも毎月分配型投資信託とはどういうものなのでしょうか。通常の投資信託との違いを見てみましょう。
(1)投資信託とは
そもそも投資信託とは、様々な債権や株式がパックになっている、運用商品の総称のことを指します。
自分で運用商品を個別に選ぶのではなく、パッケージになっている投資信託ごとの運用方針や中身を吟味して、お金を「信じて」「託す」商品です。
運用商品ですので当然リスクはありますが、運用のプロにお金を預けて運用をお任せできるので、毎日相場を追いかける必要もなく、比較的初心者にも始めやすい運用商品と言えるでしょう。
運用を任せる代わりに、信託報酬というコストがかかります。最終的に運用結果からコストを差し引いた額が、自分の利益になります。
(2)「毎月分配型」投資信託とは
基本的な仕組みや運用の考え方は、投資信託と何ら変わりありません。
違うのは、運用途中にも毎月「分配金」が受け取れることです。
通常の投資信託は売却時に利益を受け取れるのですが、毎月分配型投信は売却のタイミング以外にも毎月運用益を含む分配金が受け取れるのです。
ですので、「銀行に寝かしておくだけではもったいない」お金を運用して増やしながら取り崩すことで「ちょっとした年金やお小遣い代わりになる」と、巷でちょっとしたブームになっている商品です。
2.毎月分配型投信のメリット
それでは、毎月分配型投資信託のメリットとは何でしょうか。
これは言うまでもなく、毎月分配金が支払われることでしょう。
銀行預金に預けておくよりも金利がよく、運用して増やしながら分配金を毎月得られるので、総額として元本より多い金額を受け取れる可能性があります。
日々のお小遣い代わりや、老齢年金の上乗せ分として、根強い人気を誇るのも頷けますね。
3.毎月分配型投信のデメリット
では、デメリットは何でしょうか。
ここで皆さんに質問です。
毎月の分配金は、どのような仕組みで支払われていると思いますか?
分配金というからにはおそらく、毎月の運用で得た収益部分から支払われているとお考えの方も多いでしょう。
しかし答えは、「運用で主益が出ていようが出ていまいが、毎月分配金を支払う」仕組みになっているのです。
そもそも運用の効果を最大限に発揮させるためには、運用で得た利益を再投資し、複利の効果をフルに活用するのが鉄則です。
にもかかわらず、毎月分配型投信は運用益を分配してしまいます。
ですので、そもそも複利の効果が表れにくい商品と言えます。
ですが、実はそれだけでなく、運用で利益が出ていないのにも関わらず分配金を支払う仕組みになっていますから、場合によってはどんどん元本を取り崩していくことになります。
そして実際、多くの毎月分配型投資信託は、運用益を超えて分配金を出しているのが現状です。
4.自分に合った投資信託とは?
ここまでの話を聞くと、毎月分配型は商品としてよいものだとは思えなくなってしまうかも知れません。
しかし、誤解のないように言いますが、100%完璧な商品はないです。
実際、シニア世代の資産運用には、毎月分配型投信はとてもよくマッチする場合もあります。
現役時代にしっかり資産を築き、今後は資産を大きく増やす必要のない方などのケースです。
しかし、これから資産を大きく育てて行きたい世代にとっては、あまり大きな収益を見込めない商品と言えるでしょう。
より多くの収益性を求めるのであれば、仮に分配金を出すタイプの商品だとしても、その分配金を再投資する投資信託を選んだ方が、複利の効果を最大限利用できるでしょう。
ですので、毎月分配金を出す仕組みそのものが悪いのではなく、その仕組みを理解しないままに商品を購入してしまう、ということが問題なのです。
「自分に合った運用商品は何か」を考えるにはまず、自分は「いつまでに・いくら増やしたい」のか、目的と目標を明確にすることが大切です。
その上で、目的と目標に合った運用商品を選び、ご自身の夢を叶えるきっかけになれば、と切に願っております。
2019年6月4日 text by 久保田 正広 FPバンク