こんにちはFPバンク編集部です。
賃貸と持ち家結局どちらがお得なのか、セールスマンの言うことは鵜呑みにできないし・・・たしかに、賃貸も持ち家も営業担当者は自分のメリットになる方を当然勧めますよね。
そんな時、自分はどう判断すべきか、その基準がわかればうれしいですよね。
自分の幸せは自分で決める、一生を左右する住まいの悩み。
このコラムは、そんな賃貸と購入に関する住宅の悩みを解決いたします。
ぜひ、ご一読ください。
目次
1.賃貸?持ち家? どちらが幸せ?
憧れのマイホーム、身軽な賃貸、どちらに暮らしていても幸せな人もいれば不幸せな人もいます。なぜそんな差が生まれるのでしょうか。
間取りの差こそ多少あれども住宅環境等、共通する事項が多く、ともに幸せであってもおかしくないはずのこの2人になぜこのような違いがみられるのでしょうか。それは幸せかどうかではなく、不幸せであるかどうかの違いによって生まれた差です。
幸せとは十人十色であり必ずしも共感、共有できるものではありません。
しかし不幸せは、不安から生じ、その悩みの種類はある程度共通しており、おかねに関する不安はその最もたるものでしょう。
極論を言ってしまえば、持ち家でも賃貸でもお金に伴う不安さえなければ幸せに生きられるのかもしれません。ではどうしたら住宅の在り方に左右されず、お金の不安を感じずに生活をすることができるのでしょうか。
2.住宅の在り方はお金の考え方を大きく変える。だから議論になるのです。
持ち家か賃貸か自体には、幸福度に大きな違いはないと言われているにもかかわらず、なぜここまで議論されるのでしょうか。
それは持ち家か賃貸かの違いにより、お金の考え方が大きく変わるからです。
例えば、住宅購入を検討していない賃貸住宅に住んでいる方は、今月の家賃の支払いについては考えるでしょうが、10年後の家賃についてはほとんど考える人はいないでしょう。ましてや人生であとどれくらい家賃を払うのかを心配する人はもっとすくないでしょう。
つまり住宅購入を検討していない賃貸をしている人は、人生で居住するためにかかる総支払額で考える習慣がないため、悩むことがありません。住宅購入して持ち家を持とうと思ったらどうでしょうか。
まっさきに人生の中での総支払家賃と住宅購入の支払額を比較します。住宅ローンを組めば支払いは月々いくらと明確になるため賃貸の家賃支払いとますます簡単に比較することができるようになりどちらが得かという問題に直面します。
明確な理由のもと持ち家、賃貸と決めている人でない限り、このような問題に直面した場合それぞれの立場が異なることも相まって、議論はおきます。しかしこれらの議論は、それぞれ異なる立場のもと、各人が持っている主張によってかわされ、結論がでることはありません。
だからこそ金銭の損得という一元的な判断基準だけではない、各人の状況や将来の嗜好を踏まえた資金計画が大事なのです。決断を他人意見に任せるのでなく、明確な自身の資金計画により決断する。そうすれば持ち家、賃貸のどちらを選ぼうとも金銭の不安からくる不幸を感じることはありません。
とはいえ持ち家と賃貸の性質や違いが分からなければ、決断をすることもままなりません。そこで、次の事項では、持ち家と賃貸をメリット・デメリットの点から比較します。
3.持ち家・賃貸徹底比較
(1)持ち家のメリット
- 住宅が資産となる
- 住宅ローンさえ払いきってしまえば、住居費用はかなり少なくなる
- 自分好みにリフォーム、改築ができる
- 老後になっても環境を変えず住み続けることができる
- 国の政策として、住宅の購入にあたりローンを組んでいる場合、税控除がある
持ち家のメリットは、自己の所有物になることにあります。自己の所有物だからこそ自由に処分することも維持することもできるため、いざとなれば住宅を売り払い、まとまったお金を準備することができます。
賃貸に出して不動産収入を得ることも可能です。また、国の政策として住宅購入にあたりローンを組んでいる場合、一定の要件を満たせば税控除*が受けられます。
賃貸の家賃と同様、月々お金を支払うものの年末調整または確定申告にてお金が還付される可能性があるのも間接的ではありますが、住宅購入のメリットと言えるでしょう。
〈参照サイト〉*国税庁ホームページ
(2)持ち家のデメリット
- 住宅購入時の初期費用が高い
- 賃貸に比べると、引っ越しをするなどといった住環境の変える行動をとるのが難しい
- 月々の返済額の減額をするには相当な体力を要する
- 自己の所有物になるため修繕・維持にかかる費用は全部自分で用立てなければならない
持ち家のデメリットを端的にいうと、購入時、修繕などが発生した場合大きなお金が動くことと住宅ローンの返済額と家を取り巻く住環境を変えることが難しいことにあります。
住宅が関連する費用は百万円単位になることも多く、住宅購入を悩ませる一番の原因と言えるでしょう。
(3)賃貸のメリット
持ち家と賃貸、どちらが良いかを判断するためにまずは賃貸のメリットについて確認してみましょう。
- 月々の家賃支払いのため、ローン破綻することがない
- 状況、環境の変化に応じて、自分にあった住居へ引越しできる
- 隣人とのトラブルが起きても、引っ越しによって容易に環境が変えられる
- 家賃のコントロールが持ち家に比べてかんたん
また、給湯器の故障やお風呂等の不具合の修繕について、基本的に支払いが必要でないこともメリットの一つです。
総じて、賃貸のメリットは所有しないことにより、環境の変化に対して柔軟に対応ができることと、金銭的に身軽であることがメリットに挙げられます。
しかし、このメリットを享受できるのは環境的にも、体力的にも自分で主体的に動けることが条件になります。それを証明するように、自由の利く単身世帯であっても65歳以上になると3分の2の世帯で持ち家を所有しているというデータ*に表れております。
〈参照サイト〉*国土交通省ホームページ
(4)賃貸のデメリット
それでは今度は、賃貸のデメリットについて考えてみます。
- 子育て世代の世帯数に対して、ファミリー用の賃貸物件数が少ない
- 内装、外装についてリフォーム等改造することができない
- 一般的な年金の受給額では、収入不足と判断され入居できないこともある
- 賃貸をしている限り、一生涯家賃支払いが発生する
下記のデータから見てとれるように、どんどん住宅の一戸あたりの面積は縮小傾向にあり、全住宅種類の平均面積は20年前と比較すれば5分の1ほど減少しています。
また、下図の貸家の規模別新着工戸数から、単身世帯が賃貸のメインターゲットであることが読み取れます。
図2
つまり、賃貸のデメリットをまとめてみると、ファミリーや高齢者となると選択が減ってしまうことと、一生涯家賃を払い続けなければならないため資金計画をしっかりと計画しておかなければならないことです。
4.住居費用で持ち家と賃貸を比較する。
仮に、30歳夫婦、子供1人(2歳)で家賃月10万円のアパートを借りて住んでいる家庭と、同じく30歳夫婦子供1人(2歳)、4,500万円の一戸建てを購入した場合を比較して、どちらの費用が少なくて済むかを考えてみます。
仮定として、賃貸の場合は、子供が中学校の入学のタイミングで一回り大きい家に引っ越し家賃が13万円に、大学卒業後3年後に独り立ちをして、小さな家に引っ越し、9万円に変化するものとします。
また、入居時には敷金、礼金、仲介手数料それぞれ1か月ずつの計3か月分、更新は2年に1度、家賃の1か月分かかるものとします。
条件
家族構成 世帯主30歳、子供2歳
家賃 1年目~10年目 10万円、11年目~23年目 13万円、24年目~9万円
入居費用 家賃の3か月分
更新料 2年ごと家賃の1か月分
90歳までにかかる費用
家賃 7,344万円
入居費・更新料 385万円
計 7,729万円
金額は概算であり、保険料は算入していません。
それでは、持ち家の場合はどうなるでしょう。
年齢、家族構成は同一として、住宅価格4,000万円の一戸建てを購入した場合で見てみましょう。
住宅購入時に頭金450万円と住宅価格の8%(諸経費)、15年ごとに外壁の修繕で200万円、25年後にリフォーム代として300万円かかるものと仮定します。固定資産税、住宅ローン控除等税金の戻りも加味します。
条件
家族構成 世帯主30歳、子供2歳
住宅価格 4,000万円
住宅ローン 借入金額3,870万円、期間 35年間 金利1.3%(固定)
購入前費用 頭金450万円、住宅価格の8%(諸経費)
購入後費用 固定資産税、住宅ローン減税(戻り額をマイナスで計上)
外壁修繕 購入後15年ごとに1回200万円
リフォーム 購入後30年後に1回300万円
90歳までにかかる費用
購入前費用 720万円
住宅ローン返済 4,410万円
購入後費用 900万円
外壁修繕 800万円
リフォーム代 300万円
計 7,130万円
比較のため、持ち家と賃貸の費用を計算しましたが、ここ考えてもらいたいのは、差額についてではなく、どのタイミングで費用が発生するかです。
賃貸では、家賃以外に発生する費用は、入居費と更新料くらいで、ある程度まとまったお金が必要となるケースは多くありません。しかし、持ち家を購入するとなると購入前から頭金や諸経費が発生し、数百万単位でのお金が必要となります。
5.まとめ
賃貸と持ち家、どちらがトクと考える前に、まずはそれぞれのメリット・デメリットに加えて費用の発生のタイミングを考慮することが重要です。
この低金利時代で、住宅ローンがやすく借りられることから、ついつい持ち家を購入するほうがトクであると考えてしまいがちですが、自分の嗜好や状況を当てはめつつ、ゆとりのある支払い計画のもとに判断して初めて、賃貸と持ち家のどちらが自分にとってトクであるかが分かるようになります。
このコラムが目先の損得に惑わされず、賃貸でも持ち家でもまんぞくのいく生活がおくれるお役に立てば幸いです。
2020年6月11日
text by 久保田 正広
FPバンク