老後資金として年金の他に2000万円必要と聞いてどう思いますか?2000万円という数字だけが独り歩きしてしまっているようですね。では実際に老後資金としていくら必要なのでしょうか?
目次
1.老後の生活費はどれくらい必要?
金融庁金融審議会のワーキンググループがまとめた報告書いわゆる「年金2000万円不足」問題が物議を醸しています。
ですが老後の生活費はどんな暮らし方をしていきたいのかによって大きく変わってきます。
何に優先してお金を使い、どんな生活をしていきたいかを明確にすることで老後に必要な資金もはっきりしてくるでしょう。
(1)老後は持ち家派?賃貸派?
総務省「家計調査報告(家計収支編)平成30年(2018年)」1) によると、夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯の平均消費支出は、月23万5,615円です。この中には住居費1万3,625円を含んでいます。老後も賃貸派の方はさらに住居費を準備しておかなくてはなりません。家賃が8万円とすると差額の6万7千円を上乗せしますので月の支出は302,615円となります。年間ですと差額は80万4,000円、これが30年間ですと2,412万円にもなります。持ち家派と賃貸派ではこれだけの差がでてきます。
また、持ち家の場合は修繕費などの維持費用も考えておかなければなりませんね。
(2)老後はどんな生活をしたい?
現役時代の生活レベルを落としたくない方も多いのではないかと思いますが、「総務省家計調査報告(家計収支編)平成30年(2018年)」1) によると勤労世帯の平均消費支出は31万5314円ですので現役時代と同じレベルの生活を続けているとこの位は必要です。
また、現役時代は頑張って働いてきたのだから頻繁に外食したいとか、毎年海外旅行に行きたいといったちょっとした贅沢をしたいという方も多いのではないでしょうか。その場合は上記の平均消費支出にさらに上乗せが必要ですね。
その他、老後になると介護費用の心配もあります。こちらもある程度は準備しておく必要がありそうです。
〈出典〉1) 総務省統計局ホームページ
https://www.stat.go.jp/data/kakei/2.html
<関連コラム>ほんとうに必要な老後の生活費、その平均はいくらなのか?
2.年金はいくらもらえるの?
老後に必要な生活費がだいたい見えてきたら、次は公的年金をどれくらいもらえるかです。
ご存じの通りもらえる公的年金の額は一人一人違います。どんな年金にどれくらいの期間加入していたかによって変わってきます。
次に挙げるものはあくまでも代表的な例ですので、自分の場合の詳細は、年金定期便等の情報を元に確認してみましょう。
(1)共働き夫婦(正社員)の場合
夫婦共に正社員で働いている世帯では、夫婦共に厚生年金となり、年金が一番恵まれている世帯と言えるでしょう。老後の年金額は現役時代の給与水準と勤続年数によって決まるからです。
夫と妻が同水準の年金を受け取るとすると合わせて月額30万円を超える場合もありますし、同水準でなくても妻も勤続年数が長い場合は20万円台後半くらいになるでしょう。
このケースでしたら、基本的な生活費は年金で賄うことができる場合が多いように思えます。でも最終的には生活水準次第なので、ゆとりある老後を目指すなら、年金以外に準備が必要となります。
(2)会社員の夫と専業主婦の妻の場合
夫が会社員でも妻が専業主婦やパートで働いていて夫の扶養にはいっていた場合、夫は厚生年金ですが、妻は基本的には国民年金しかもらえません。妻が結婚前に加入していた厚生年金があれば加算されますが、完全な共働きで退職を迎える夫婦とはだいぶ差がでますね。もらえる金額は月額20万円台前半といったところでしょうか。
このケースでしたらいかかでしょう?年金以外の準備の必要性は(1)よりも高いでしょう。
(3)自営業夫婦の場合
夫婦共に自営業の場合だと、夫婦共に国民年金しかもらえず、満額でも月額約13万円にとどまるので、ほとんどの場合、公的年金以外に老後資金を準備する必要があるでしょう。
自営業の方は定年がありませんので健康であれば働き続けることができますが、日本人の健康寿命は男性72歳、女性74歳と言われています。一方、平均寿命 2) は男性81歳、女性が87歳ということですので働ける期間は限られており、健康ではなくなってからの残りの生活にも備えていかなくてはなりません。
〈出典〉2) 厚生労働省ホームページ
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life17/index.html
3.まとめ
今まで述べてきたように、老後にいくら必要かということは、老後にどんな暮らしをしたいか、どんな働き方でどれくらいの年金を受け取ることができるのか、によって変わってきます。2000万はあくまで平均値です。
まずは自分がどのように暮らしていきたいか思い描いてみてください。そしていくらくらい貰えるのか現状を把握してみましょう。その差額分を今後どのように準備していくか考えることになります。今後の働き方で貰える年金額も変わってきますので働き方を見直すことも有効ですし、早めに貯蓄の手段を考えることもできるでしょう。
ただお金を貯めることは目的ではなく、あくまでも楽しく快適な老後を過ごすための手段です。老後にどれくらいのお金が必要なのかを大まかにでも把握しておき、準備をしておくことで老後に対する不安を少しでも解消していきたいですね。
2019年7月2日
text by 久保田 正広
FPバンク