預けても全く増えない預貯金、また国の社会保障制度が不安視される中で、株式投資を始めて自分でちゃんとお金を増やさないと、という危機感を持つ方が増えています。
今日はそんな方を対象に、米国と日本の株式投資の違いについてお話してみます。
1.米国家計の金融資産では株式・投資信託が50%以上を占める
家計の金融資産構成を日米で比較*すると、日本は預貯金54.3%、株式・投資信託14.3%と預貯金中心であるのに対して、米国は株式・投資信託が51.0%、預貯金13.3%と、株式が金融資産の中心を占めています。
(出典:資金循環の日米欧比較 日本銀行調査統計局 P.2)
もし「投資は怖いもの」なのであれば、このように投資に対して積極的なのは、むしろマイナスにしかならないはずです。
それなのに、どうしてこんな大きな差があるのでしょうか。
2.長期保有の米国、短期保有の日本
米国人は、貯金感覚で株式を購入して格付や配当を重視し、長期保有します。
保有株を売却せずに新たな資金で株を購入するので、株価があがれば金融資産がどんどん大きくなっていきます。
それに対して、日本では株をギャンブル感覚で購入する人が多いです。
短期で利益が出たら売りたがる傾向が強く、薄利食いを繰り返した後に大きな下落に見舞われて塩漬け、もしくは撤退したという話を多く聞かされます。
証券会社が手数料稼ぎですぐに売却するようすすめてきた側面も多分にありますが、ネット取引をされている方も同じ傾向が強いように感じられます。
3.株式投資の本質は「投資先の企業の成長」
米国人が株式を長期保有するのはどうしてだと思いますか?
それは株式投資の本質への理解が広く共有されているからだと思います。
株式投資の本質とは何か、それは企業の稼ぐ力に対する投資です。企業は厳しい競争の中、少しでも多く稼ごうと必死に努力しています。それを信じて投資した見返りとして、配当や株価自体の値上がり(キャピタルゲイン)という成果が得られます。
短期的には景気の良し悪しで一次的な値上がり・値下がりがあっても、長期的に見れば投資先企業が一生懸命活動する限り、預貯金よりも多くの見返りが期待できるのは当然、という考え方です。
一方、短期売買は買うタイミング(機会)と売るタイミング(機会)を計って行うものなので、「投資(investment)」とは別の「投機(speculation)」と言うもの、「資産運用」ではなくて「マネーゲーム」だと思います。
もしあなたが株式の一時的な値上がり・値下がりを利用して大きく儲けたいなら、マネーゲームが合っていますが、プロフェッショナルがひしめく激戦区、勝つのは大変でしょう。
4.まとめ
株式投資の本質は米国も日本も変わらないので、日本人も株式投資を正しい方法で行えば、そのメリットを享受できるはずです。
日本ではこれまで学校でお金について学ぶ機会が殆どなく、金融リテラシー(読み書き能力)が低いと言われていますが、最近は国も「投資教育」を積極的に進めています*。
株式投資の基本ルールを学ぶ時間を少しだけ取ってから始めれば、誰にとっても、株式投資はライフプランに欠かせない有力な資産運用手段になると思います。
*参照:金融庁「投資の基本」
https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/knowledge/basic/index.html
2019年6月20日
text by 久保田 正広
FPバンク