教育資金の負担はとても大きいので、もしご両親の「ポケット」が大きければ恩恵は最大限に受けておきたいですね。2019年3月末までとされていた教育資金贈与の非課税制度が2年延長されています。但し厳しい条件も加わりましたので、しっかり理解しておきましょう。
目次
1.教育資金贈与の受取方法
(1)「都度」贈与
例えば、大学入学時に入学金や授業料などの費用を祖父母に負担したもらったとします。このように直系血族や兄弟姉妹のような扶養義務者が、生活費や教育費に必要な費用を、必要な都度、贈与してその費用に充てた場合には、贈与税はかからないことになっています。
つまり、お子さん・お孫さんの成長に合わせて大きく教育資金がかかる場面で、その都度贈与を受けた場合は非課税になるということです。
ポイントは「必要な都度」「その費用に充てる」ということで、前もって一括して資金を贈与した場合や、受け取った資金をその費用に充てず預貯金にしたような場合は、このルールは適用されないことになります。
ただし贈与した方が死亡された場合は、都度贈与も含めて、亡くなる前3年以内に贈与した財産を加算して、相続税の課税が判定・計算される事になります。
(2)「一括」贈与
今は一定の要件を満たせば、一括贈与でも最大1500万円まで非課税になる制度があります。
ただし色々な要件を満たす必要があるので、注意が必要です。例えば贈与を受ける段階でどの用途に使うかを決めていなくても大丈夫ですが、入学金・学費などの学校関連費以外に使う場合は、1500万円のうち500万円までと上限が決められています。
なお、この制度は都度延長が行われ、2022年時点では、2023年5年3月31日までが期限となっています。
2.【改正】教育資金贈与の一括贈与を利用する際の注意点4つ
(1)受贈者の所得が1000万円を超えていると対象外
この要件については、祖父母から孫への贈与を想定した場合は、孫の所得が1000万円以上というケースは殆ど無いと考えられるので、該当者は少ないと思われます。
(2)贈与を受けてから3年以内に相続が発生した場合、残金を財産に足し戻し
一括贈与を受けてから3年以内に贈与をしてくれた人が亡くなった場合、贈与を受けた金額のうち、その時点で使いきれていない金額は相続財産に足し戻して相続税が課税されることになりました。
ただし、相続発生日において、次のいずれかに該当する人は対象外となります。
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この取り扱いは、2019年4月1日以降に行われた教育資金贈与について適用されるので、それ以前に行った贈与については3年未満に相続が発生しても影響はありません。
(3)23歳以上の習い事に対する費用は対象外
この非課税制度は、中学高校、専門学校や大学の学費以外にも、塾やお習字、英会話教室やお料理教室、免許の教習所の費用にも使うことが可能です。
しかし23歳以上の人については、学校ではない趣味や習い事、お稽古の費用は対象外です。
例えば、料理の専門学校は学校なので対象ですが、お料理教室は習い事なので対象外ということになるわけです。
2019年7月1日以降に支払った習い事費用から対象外となります。
(4)30歳になっても学校に在学していたら非課税が継続
現在では、30歳の時点で大学院などの学校に通っている人も少なくありません。30歳になった時点で学校等に在学している、もしくは、教育訓練給付金の対象となる教育訓練を受けている人に対しては贈与税を課税しないことになりました。
ただしその人が卒業したり、教育訓練が終わった年の年末に、使いきれていない金額がある場合は、その残額に対して贈与税が課税されます。また40歳になった時には強制終了となります。
3.まとめ
税制改正を踏まえた「教育資金贈与の一括贈与を受けた場合の非課税」制度の改正点現在の内容を、まとめてみました。
【1】受贈者が所得1000万円以上の人は適用されない 【2】贈与を受けて3年以内に相続が発生した場合、残額は足し戻し相続税の対象 【3】受贈者は23歳以上になると習い事などは非課税の対象外 【4】受贈者は30歳を過ぎても一定の条件で最長40歳まで非課税のまま活用できる |
《適用時期・対象》
【1】【2】⇒2019年4月1日以降に行う教育資金贈与から
【3】⇒2019年7月1日以降に支払う習い事費用から
【4】⇒2019年7月1日以降に30歳になる人から
この非課税制度は、ようやく周知されて活用する人も増えてきたからこそ、2年間の延長、改正となったのではないでしょうか?
少子化が言われますが、お子様のいる家庭にとっては依然、教育資金の負担はとても重いものです。日本の未来を担う子ども達への投資としても、非課税枠は最大限に利用したいものですね!!
2019年8月9日
text by 久保田 正広
FPバンク